sasame-goto.

映画や本やおいしいものについて

マグニフィセント・セブン@渋谷シネパレス

www.youtube.com

■あらすじ
1870年代のアメリカ西海岸の小さな町、ローズ・クリーク。金鉱のあるこの町では、大富豪・ボーグにより強引かつ暴力的な地上げが進められていた。そんな中、ボーグに夫を殺害された未亡人・エマが町の住人から資金を集め、賞金稼ぎのサムに助けを求める。サムは偶然出会ったギャンブラーのファラデーや旧友で凄腕のガンマンのグッドナイトを始めとした七人の男を集め、ローズ・クリークへの町へと向かう。


※ネタバレ含みます

七人の侍』の西部劇でのリメイク版『荒野の七人』のリメイク版…という位置付け。七人の侍は子供の頃におじいちゃんと一緒に観たことがあるのだけど、本当に小さかったので全然覚えていない…。でも戦闘シーンがかっこよかったということだけは覚えていて、今回この作品を観て「そうそうこの感じ!」と思い出しました。

キャラクターが大変に格好良い!お調子者のギャンブラーのファラデー、サムの旧友で凄腕のガンマンのグッドナイト、グッドナイトの相棒でナイフの達人のビリー、お尋ね者のメキシコ人のバスケス、信心深い怪力男のジャック、ネイティブアメリカンのレッド・ハーベスト。彼ら七人がとにかく格好良い。かっこよすぎて涙が出るレベル。あまり多くは語らないものの、たった一言の言葉やたった一発の銃弾が雄弁に物語るという素晴らしさ。

仲間集めのシーンではどうしてサムに協力する気になったのかという心情を細かく描くことはないのですが、それぞれの持つバックグラウンドから想像するのがとても楽しい。そういう空白が程よくて、観客に委ねてくれるのもまた良し。レッド・ハーベストとボーグ側のインディアン男のネイティブアメリカン対決はもっとがっつり観たかったなぁ。物足りなさを感じたそのくらいで、あとは全てがいい塩梅でした。

男たちの絆もとても良い…!グッドナイト&ビリーのコンビが最高でした。グッドナイトの冗談にビリーだけが笑ったり、グッドナイトをビリーがさりげなくフォローしたり、すごくいい関係でした。どんな風に出会ったのかとか、非常に気になる。コンビと言えば、中学生みたいにからかい合うファラデー&バスケスも可愛かったなぁ。ファラデーがやられると激おこオーバーキルで棺桶送りにしちゃうバスケス。いいライバルだなぁと微笑ましかったです。

あと、レッド・ハーベストの「腹減った」のシーン!あの一言で他の面々との距離がグッと縮まったなぁという感じ。そして町での戦いの時、躊躇なく銃を使ったのも格好良かった。特に言及されていたわけではないけど、ネイティブアメリカンが迫害された時に使われたであろう銃を躊躇なく手にしたと思うと痺れるし、英語もわかったということはもしかして白人と何らかの出会いがあって銃を使ったことがあって(そもそもあの一発からして使いこなせていたし)、それが部族の長に「お前は違う」と言われた理由だったり…?等と色々と考えてしまった。ただの空想というか妄想なのだけど、そういう行間がとても良かったです。

そんな風にキャラクターへの思い入れがめちゃくちゃ深まったものの、半数が命を落としてしまうことに…。でも、死んでしまう人たちにもちゃんと救いがある。彼らは自分のすべきことを完遂したし、矜持が折られることもなく、赦されて散って行ったのが良かったなぁ…。ちゃんと意味のある死だったのだと思います。「死の天使」グッドナイトが地に落ちて、その役目を終えた…という流れが素晴らしかった。

キャラクターについつい目が行ってしまうのだけど、アクションも凄かったです。サムが馬の片側に乗って撃つシーンがめちゃめちゃかっこよくて痺れました。ビリーのナイフを使った近接戦も良かったし、バスケスの二丁拳銃も格好良かったし、ジャックのバーサーカー的な突っ込み方も凄かったし、ギリギリの場所での命の取り合いに一秒たりとも眼が離せない。というかもう目が足りない。1カメの映像も2カメの映像も3カメの映像も全部くれ!!コンマ1秒たりとも見逃せない格好良さ!

すごく良い映画を観た!という多幸感でいっぱいです。素晴らしき作品だ…。

 

Magnificent Seven [Blu-ray] [Import]

Magnificent Seven [Blu-ray] [Import]

 

 

■関連リンク

ドクター・ストレンジ@池袋HUMAXシネマズ


「ドクター・ストレンジ」 最新映像

 

■あらすじ
天才外科医としてメスをふるっていたストレンジ医師。地位も名誉も手に入れて傲慢に過ごしていたある日、交通事故で両手の機能を失ってしまう。高額な治療を繰り返すが回復は見込めず絶望していた時、『カマー・タージ』という施設で下半身麻痺から回復した者がいるという情報を得る。カマー・タージに向かったストレンジが見たものは、神秘に満ちた魔術の世界だった。手を治すために魔術の修行に励むストレンジだったが、カマー・タージと敵対する勢力との戦いに巻き込まれ…。

 
※ネタバレ含みます

面白かったー!マーベルもアメコミもはあまり良く分からない私でも十分に楽しめました。マーベルユニバース?というのかな?があまりにも壮大すぎて一体どこから入ればいいのか分からなかったのだけど、スルッと入れて楽しく観れました。私のようなライト層も観たまま楽しめるし、詳しい人は行間を読んでディープに楽しめそうだし、すごく上手く作られているなぁ。

魔術を用いて時空を歪めながら戦うのですが、この映像美が凄まじい。2Dだったのに夢中で目で追っていたら酔いそうになった。笑 エッシャーの騙し絵のような、幾何学図形のような映像の応酬に、脳がグラグラとやられっぱなしでした。特にカマー・タージでストレンジが初めて多元宇宙を体験するシーンは、もはや合法ドラッグの域。3DとかIMAXで観たら一体どうなってしまうんだろう…。

キャラクターもとても魅力的でした。予告やあらすじで耳にしていたほど、ストレンジが傲慢な人ではなかったなぁ…という印象。もっとすごい嫌な奴なのだと思っていたので、事故に関しては同情の方が強かったかも。間違いなくストレンジの危険運転が原因ではあるのだけど。ウォンのキャラが良かったなぁ。堅物そうに見えておとぼけなところもあって、なんとも愛すべきキャラクター。そしてワンが格好良かった…!パズルのように足場を組み替えながら扇子風に出力したシールドみたいなやつ(語彙力がない)で戦うのがすごく格好良かったです。

アメコミヒーローというと一直線でどちらかというと直情型、というイメージがあったのだけど、ストレンジは思考を重ねて戦法を決めるというのが面白かった。医者である矜持を守りつつ柔軟に闘うというのが格好良かったなぁ。ワンの選択を受け入れるあたりもストレンジの性格が出ていたなぁと思います。

ちょいちょい入る笑いも良かった。Wi-Fiのパスワードだとかビヨンセだとか、クスッと笑える小ネタがあって些細なやり取りも楽しめました。ストレンジ先生は自分にジョークのセンスがあると思ってそうだけど、終始小スベり感が漂っているのがなんともかわいらしかった。笑

そしてマントちゃんがとてもかわいい!性別設定があるか分からないけどものすごく乙女感を感じた…。マントちゃん可愛いよマントちゃん…!締め上げながら頭部を殴打するエンドレスバイオレンスに笑ってしまった。このマント殺る気まんまんだ…!強くてかしこいマントちゃんの今後の活躍も気になるところです。

次の敵はモルドかなぁと思いきや、エンドロール明けのソーとのやりとりも気になる…!ソーとストレンジ先生が共闘とかそういう展開なのだろうか。それにしてもモルドの高潔さがそう作用してしまうのか…と思うとなんともせつないです。

 

ドクター・ストレンジ:プレリュード (ShoPro Books)

ドクター・ストレンジ:プレリュード (ShoPro Books)

 

高慢と偏見とゾンビ@新文芸坐

www.youtube.com

■あらすじ
ゾンビが蔓延る18世紀のイギリス。田舎町に暮らすベネット家の五人姉妹はカンフーと剣を駆使してゾンビと戦う日々を送っていた。ある日、青年資産家であるビングリーの舞踏会に招かれ、次女のエリザベスは大富豪の騎士・ダーシーに出会う。高慢なダーシーに嫌悪感を抱くが、二人で戦う内に徐々に惹かれ合っていき…。

 
観逃がしていたところ、新文芸坐のお蔭で観れました!ありがたや~!同時上映の『ザ・ギフト』も面白かったし、二本立て名画座は本当にありがたい。

19世紀の名著『高慢と偏見』にゾンビ要素をプラス。何故足したのか。しかし、元からこういう設定なのではないかと思うほどによく馴染むゾンビ。当然のようにゾンビと戦う登場人物たち。違和感ゼロで話が展開していくのが面白過ぎた。

衣装がとても美しい!舞踏会に出かけるために五姉妹が着替えをするシーンで、ガーターベルトにナイフを仕込んでいく様が大変美しかったです。ひらひらとドレスを翻しながら剣とカンフーでゾンビを薙ぎ倒していくのが格好良かった。痺れる!そしてガールズトークに花を咲かせながらカンフーの組手をするシーンが秀逸。そしてカオス。しかし謎のしっくり感。

ストーリーはゾンビを除けば、反発し合いながらも惹かれ合って行く男女…という王道少女漫画的展開で、200年前の作品というのが信じられないほど。エリザベスとダーシーの皮肉めいた会話劇も面白かったです。そんな会話を交わしながらも殺る気まんまんに口撃と共に攻撃を交わしていてカオス。このやり取り、原作のままなのかな。隣にいたおじさん(おそらく原作読了済)がめっちゃウケてて羨ましかったです。これ、間違いなく原作を読んだ方が楽しめると思う。

ラザロ教会のラザロってラザロ徴候のラザロか!と今更ながら知りました。死んだ者が生き返る、というところからきていたのだな。

新文芸坐に行ったので食レポをします。この映画館、なぜか飲食が充実していて、ドリンクバーがあったり近所のアジアンダイニング「サグーン」提供のフードメニューがあったりと、まるで歌舞伎座のような観てよし食べてよしな環境なのであります。くいしんぼうの血が騒ぎます。

 

f:id:mach24:20170403010626j:image
本日いただいたのはこちらのサグーンロール。もちもちの生地にたっぷりの野菜と鶏肉が巻かれていてヘルシーに美味しい。そして手が汚れないので映画を観ながらでも食べやすい。わたしは幕間の10分間でぺろりと食べてしまったけども。チャーハンとカレーパンも気になるんだけど、食べやすさからいつもこちらを頼んでしまう。今回も美味しかったです!

f:id:mach24:20170403010702j:image
しかし裏を見てみると
_人人 人人_
>チャーハン<
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
こんなうっかりさんなところもまた愛し。

 

高慢と偏見とゾンビ [Blu-ray]

高慢と偏見とゾンビ [Blu-ray]

 

 


■関連作品

高慢と偏見(上) (光文社古典新訳文庫)

高慢と偏見(上) (光文社古典新訳文庫)

 

原作本はこちら。読んでから観ればよかった!

フリークス・シティ@ヒューマントラストシネマ渋谷

www.youtube.com

■あらすじ
人間・ゾンビ・ヴァンパイアの種族が暮らす町・ディルフォード。多少のいがみ合いはありながらも平穏に暮らしていたある日、エイリアンの急襲を受ける。四つ巴のバトルが起こる中、同じ高校に通う人間のダグ、ゾンビのネッド、ヴァンパイアのペトラの三人が立ち上がる。果たして三人は、町を救うことはできるのか?

 ※ネタバレ含みます

未体験ゾーンの映画たち5本目は、ドタバタ青春ホラーコメディ。いつもより少し狭いシアターだったものの、場内ほぼ満員でした。あらすじの時点でめちゃくちゃ面白そうだもんな…。

期待を裏切らない面白さでした。全編に漂うB級感とテンポのいいストーリー、ニヤリとする小ネタの数々、そしてラストの謎の感動。ご都合主義さえも良いエッセンス!トンデモ設定なのに地方都市あるあるやアメリカのスクールカーストあるあるもコミカルに描いていて上手いなぁ。軽く観られてスカッとできる良作です。

三人が暮らすのはパッとしない小さな町で、名物は謎の肉を使ったサンドイッチ。高校生活も家族との関係もあまり上手く行っていない。何から何までショボい。そんな三人だけど、町のピンチを前になんとか守ろうと奮闘して成長していくのがとても良かった。三人ともそれぞれ魅力的なのだけど、ゾンビなのにブレインポジ(※食糧的な意味ではなく)のネッドくんがソーキュートでした。

後半のシーンでダグが熱弁を揮うもいまいち同意を得られなかったのに、ダグパパが突如として始めた\U....USA!USA!USA!/に次々に乗っかって\USA!USA!USA!/と一気に士気を高めるくだりが最高でした。これがアメリカノリ…!!!あと最後の最後の決戦での「なんであいつドイツ訛りなんだよ…」のくだりにも笑った。

何か見たことがある…と思っていたら、ビッチちゃん役の人(役名忘れてしまった…)がハイスクール・ミュージカルのガブリエラ役の人だった!あの頃から美人さんだったけどますます美しくなってー!!と親戚のおじさんみたいなきもちになってしまいました。

わりとサクッと「あっごめん殺っちゃった」「あっごめん食べちゃった」みたいなノリで罪のない一般人が死ぬので、そこを笑いに昇華できない人にはオススメできないのだけど、そこらへんをこういうもんだと割り切って流せる人であればオススメしたいです。普通に面白い。

 

アイヒマンを追え!ナチスが最も畏れた男@ヒューマントラストシネマ有楽町

www.youtube.com

■あらすじ
1950年代後半のフランクフルト。検事長のバウアーは、ナチスによる戦争犯罪の告発を行うべく奔走していたが、法律・政治関係者は戦時中にナチスに関係していた者が多く、捜査を行うことに抵抗を示す。捜査は難航を極めていたが、ある日、アイヒマンがブエノスアイレスに潜伏しているという情報を入手する。ドイツの機関では捜査を行うことができないと判断したバウアーは、イスラエルの諜報機関・モサドに情報提供することを決意する。

※ネタバレ含みます

時系列的には「アイヒマン・ショー」の前のお話。アイヒマン逮捕までの一連の流れを描いています。ドイツ政府や検事局に勤める人々はその多くが戦争関係者であり、戦争犯罪を直視することを忌避する。真実から目を逸らしたまま終戦から十年以上が経った1950年代の後半、未だナチスをドイツ国民の手で裁くことを諦めない者がいた。そんなバウアー検事による執念の物語です。

バウアーが完璧な英雄ではなく、過去には政治犯として収容所に入れられ、転向書に署名をしナチスに屈した経験があり、さらには当時は法律で禁じられていた同性愛者であるという面を描いていたのが良かった。一度は砕けた人でも、誇りを取り戻して自分を律することができるし、マイノリティに発言権がないはずがないのだとバウアー自身が行動で示してくれました。

若者との討論番組でドイツの誇りは何かと問われたバウアーの答えが印象的。「森や山は誇りではない。我々が作ったものではないからだ」「ゲーテアインシュタインも違う。彼らは偉大だが、それは彼ら個人のものであり、ドイツが偉大なわけではない」「我々の誇りは一人一人が何を考えるか、そこにある」というようなことを返すのだけど、そんな言葉にも自国の未来を見据える気持ちが垣間見えてとても良かった。

骨太な物語や登場人物はもちろん、それらを彩る音楽が素晴らしかった。哀愁漂う少しレトロな音楽がマッチしていて格好良かったなぁ。そして、甘く切なく歌い上げる歌姫ちゃんがめちゃくちゃに美しかった…。衣装やその着こなしにも性格が出ていたりして、とても面白かった。バウアーの後ろ髪がかわいかったです。笑

完全なフィクションというわけではなく、カールは実在の人物ではない模様。でもバウアーとカールの絆はとても素晴らしかった。カールのしたことは結局は裏切りで完全にアウトなのだけど、ようやく本当の自分をさらけ出せる相手に出会えた喜びを思うと、あそこで店に行ってしまったことは責められない気がする…。カールはあの後どうなったんだろう。フィクションの人とは言えこの映画の中では確かに存在していたので、とても気になってしまいます。

 
■関連リンク

 本作の後、アイヒマンがどのように裁かれたのかはこちらで描かれています。

 

 こちらもバウアーを描いた作品の模様。こちらも観てみたいなぁ。

オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティ

 

 

■あらすじ
イスタンブールとカレーを繋ぐ国際列車・オリエント急行。様々な職業や国籍の人々が乗り合わせていたが、雪で立ち往生した車内で乗客の一人である老富豪が刺殺される。死体には12か所もの刺し傷があり、強い怨恨による犯行かと思われた。しかし、乗客たちのほとんどは被害者と面識はなく、全員にアリバイがあった。一体、犯人は誰なのか。偶然乗り合わせていた名探偵ポアロが推理に乗り出す。

 
※ネタバレ含みます

kindleにて。1934年発表の作品。「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」とともに年末に行われていたkindleアガサ・クリスティセールで購入したもの。一度読んだ本はなかなか手に取らないのだけど、こういうセールがあると嬉しいなぁ。

国籍も職業も異なる他人同士が乗り合わせる中で起こった殺人事件。被害者はアメリカで起こった誘拐殺人事件「アームストロング事件」の主犯であることが判明する。強い恨みを抱かれていたことは間違いないが、果たして犯人は一体誰なのか…。ポアロの推理の結果、なんと乗客全員(正確には13人中12人)が犯人であり、それぞれが運転手や家庭教師や料理人等、アームストロング家に縁のある人々であったことが判明。それぞれ異なる強さや利き手で行われていた12か所の刺し傷は、全員が一度ずつ刺したものであったのです。…という、「アクロイド殺し」の語り手=犯人に告ぐ超予想外の犯人なのでした。

天誅とは言え殺人は殺人…と思いきや、ポアロは推理の際に二つの可能性を示唆します。ひとつは、前述の全員が犯人であると言う推理。もう一つは、犯人は停車中の電車から逃走したと言う推理。これまでのやり取りを目にしてきたコンスタンティン医師とポアロの友人である国際寝台車会社の重役・ブックにどちらだろうかとわざと問いかけて、二人とも後者を選ぶのです。謎は解けても、真実は乗り合わせた人々の胸の内に…。というエンディング。トリックに続きこちらも賛否両論ありそうですが、わたしは好きでした。

登場人物が大勢なので何が何やら…になるかと思いきや、とてもキャラが立っているので混同することもなく楽しめました。ドラゴミロフ公爵夫人がとっても魅力的…!そしてハバード夫人がなんとも悲しい。本作は中年女性になんとも言えない深みがあって良かったなぁ。

「イタリア人だからアイツは怪しい」とか「これだからアメリカ人は」と人種括りの皮肉が当然のように横行しているのもこの時代ならでは。このやりとりは後世に至るまで変えないで欲しいなぁ。そういう表現はそれらの時代特有のものとして大らかな気持ちで受け止めたいなぁと思うのです。

著者の孫によるまえがきで述べられていた通り、アームストロング事件はこの事件が元になっていた模様。結局事件はあやふやなまま終わってしまったようで、現実の事件はなんと後味の悪いものかと…。

 

■関連リンク
www.belmond.com今なお走るオリエント号。一度でいいから乗ってみたいなぁ。殺人事件は嫌だけども…。

アブノーマル・ウォッチャー@ヒューマントラストシネマ渋谷

www.youtube.com

■あらすじ
新居の下見に向かった新婚夫婦のライアンとクレア。不気味で異臭のする大家に不信感を抱いたが、念願の庭付き一戸建てを前に引っ越しを決定する。しかしその家はいたるところに大家により監視カメラが仕掛けられていた。カメラに気付くことなく日々を営む二人だったが、大家の行動は次第にエスカレートし…。


※ネタバレ含みます。

未体験ゾーンの映画たち3本目。じじいが新婚夫婦をおはようからおやすみまで熱く見守るサイコホラー。「キモい!」と「怖い!」が交互に押し寄せ、常に不快と不愉快と不安に支配され続ける90分間でした。

へ、変態だー!!!というレベルでは済まされない方向にぶっとんでいた。大家が徐々に箍が外れ常軌を逸していき、もう誰にも止められない…となる後半の盛り上がりも良かったんだけど、序盤から中盤にかけての不気味さと執拗さが最高でした。特にじじいが新妻の歯ブラシを舐めてから頬にゾリゾリするシーン、最悪ですね!今まで観たどんなグロい映画より不快指数が高かった。そんな妙な匂いに気付いた妻に対する夫の「人間の口の匂いなんてそんなもんだよ」という発言がアホすぎて和んだ。そんなわけがあるか。そして「そうなんかな…?」みたいな顔をする妻。そんなわけがあるか。

そんなアホ夫は妊娠中の妻の留守を狙って勤務先の美人アシスタントと浮気を開始。確かにクレアも我儘勝手なところはあったけれども、これは…と思っていたら、そんなところも執拗に見つめ続けていた大家。一体何を考えているのか分からないまま、徐々にアグレッシブに行動し始めます。家に訪れた不倫相手に襲いかかり、監視先の家の中央にある秘密の防音室に監禁。ここで初めて他者に対する攻撃性をあらわにするのですが、意外と動けるタイプであることが判明しめちゃくちゃびびった。
襲いかかる大家「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
襲われる不倫相手の女「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
観ていた私「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
陰からじっとり見つめるタイプじゃないのかよ!!!!

なんだかんだで旦那が頑張って妻とお腹の中の子を助けてハッピーエンドでしょ?…と思ったのですがそんなはずはなかった。最悪のさらに先のラストからの爺のいい笑顔でフィニッシュです。結局大家の狙いが最後までよくわからなかったのだけど、お腹の子供を守らねば?助けねば?俺のもの?という感情が歪んだ形で現れたということ…?この部分、あまり言及されていなかったように思うんだけどどうだっけな。はっきりしないので目的がわからなくて余計に怖い。

後味の悪さ含め、最初から最後までやりきってくれたなぁ!ちくしょう!最悪だ!(※褒め言葉)

 

アブノーマル・ウォッチャー [DVD]

アブノーマル・ウォッチャー [DVD]