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映画や本やおいしいものについて

マグニフィセント・セブン@渋谷シネパレス

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■あらすじ
1870年代のアメリカ西海岸の小さな町、ローズ・クリーク。金鉱のあるこの町では、大富豪・ボーグにより強引かつ暴力的な地上げが進められていた。そんな中、ボーグに夫を殺害された未亡人・エマが町の住人から資金を集め、賞金稼ぎのサムに助けを求める。サムは偶然出会ったギャンブラーのファラデーや旧友で凄腕のガンマンのグッドナイトを始めとした七人の男を集め、ローズ・クリークへの町へと向かう。


※ネタバレ含みます

七人の侍』の西部劇でのリメイク版『荒野の七人』のリメイク版…という位置付け。七人の侍は子供の頃におじいちゃんと一緒に観たことがあるのだけど、本当に小さかったので全然覚えていない…。でも戦闘シーンがかっこよかったということだけは覚えていて、今回この作品を観て「そうそうこの感じ!」と思い出しました。

キャラクターが大変に格好良い!お調子者のギャンブラーのファラデー、サムの旧友で凄腕のガンマンのグッドナイト、グッドナイトの相棒でナイフの達人のビリー、お尋ね者のメキシコ人のバスケス、信心深い怪力男のジャック、ネイティブアメリカンのレッド・ハーベスト。彼ら七人がとにかく格好良い。かっこよすぎて涙が出るレベル。あまり多くは語らないものの、たった一言の言葉やたった一発の銃弾が雄弁に物語るという素晴らしさ。

仲間集めのシーンではどうしてサムに協力する気になったのかという心情を細かく描くことはないのですが、それぞれの持つバックグラウンドから想像するのがとても楽しい。そういう空白が程よくて、観客に委ねてくれるのもまた良し。レッド・ハーベストとボーグ側のインディアン男のネイティブアメリカン対決はもっとがっつり観たかったなぁ。物足りなさを感じたそのくらいで、あとは全てがいい塩梅でした。

男たちの絆もとても良い…!グッドナイト&ビリーのコンビが最高でした。グッドナイトの冗談にビリーだけが笑ったり、グッドナイトをビリーがさりげなくフォローしたり、すごくいい関係でした。どんな風に出会ったのかとか、非常に気になる。コンビと言えば、中学生みたいにからかい合うファラデー&バスケスも可愛かったなぁ。ファラデーがやられると激おこオーバーキルで棺桶送りにしちゃうバスケス。いいライバルだなぁと微笑ましかったです。

あと、レッド・ハーベストの「腹減った」のシーン!あの一言で他の面々との距離がグッと縮まったなぁという感じ。そして町での戦いの時、躊躇なく銃を使ったのも格好良かった。特に言及されていたわけではないけど、ネイティブアメリカンが迫害された時に使われたであろう銃を躊躇なく手にしたと思うと痺れるし、英語もわかったということはもしかして白人と何らかの出会いがあって銃を使ったことがあって(そもそもあの一発からして使いこなせていたし)、それが部族の長に「お前は違う」と言われた理由だったり…?等と色々と考えてしまった。ただの空想というか妄想なのだけど、そういう行間がとても良かったです。

そんな風にキャラクターへの思い入れがめちゃくちゃ深まったものの、半数が命を落としてしまうことに…。でも、死んでしまう人たちにもちゃんと救いがある。彼らは自分のすべきことを完遂したし、矜持が折られることもなく、赦されて散って行ったのが良かったなぁ…。ちゃんと意味のある死だったのだと思います。「死の天使」グッドナイトが地に落ちて、その役目を終えた…という流れが素晴らしかった。

キャラクターについつい目が行ってしまうのだけど、アクションも凄かったです。サムが馬の片側に乗って撃つシーンがめちゃめちゃかっこよくて痺れました。ビリーのナイフを使った近接戦も良かったし、バスケスの二丁拳銃も格好良かったし、ジャックのバーサーカー的な突っ込み方も凄かったし、ギリギリの場所での命の取り合いに一秒たりとも眼が離せない。というかもう目が足りない。1カメの映像も2カメの映像も3カメの映像も全部くれ!!コンマ1秒たりとも見逃せない格好良さ!

すごく良い映画を観た!という多幸感でいっぱいです。素晴らしき作品だ…。

 

Magnificent Seven [Blu-ray] [Import]

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■関連リンク

ドクター・ストレンジ@池袋HUMAXシネマズ


「ドクター・ストレンジ」 最新映像

 

■あらすじ
天才外科医としてメスをふるっていたストレンジ医師。地位も名誉も手に入れて傲慢に過ごしていたある日、交通事故で両手の機能を失ってしまう。高額な治療を繰り返すが回復は見込めず絶望していた時、『カマー・タージ』という施設で下半身麻痺から回復した者がいるという情報を得る。カマー・タージに向かったストレンジが見たものは、神秘に満ちた魔術の世界だった。手を治すために魔術の修行に励むストレンジだったが、カマー・タージと敵対する勢力との戦いに巻き込まれ…。

 
※ネタバレ含みます

面白かったー!マーベルもアメコミもはあまり良く分からない私でも十分に楽しめました。マーベルユニバース?というのかな?があまりにも壮大すぎて一体どこから入ればいいのか分からなかったのだけど、スルッと入れて楽しく観れました。私のようなライト層も観たまま楽しめるし、詳しい人は行間を読んでディープに楽しめそうだし、すごく上手く作られているなぁ。

魔術を用いて時空を歪めながら戦うのですが、この映像美が凄まじい。2Dだったのに夢中で目で追っていたら酔いそうになった。笑 エッシャーの騙し絵のような、幾何学図形のような映像の応酬に、脳がグラグラとやられっぱなしでした。特にカマー・タージでストレンジが初めて多元宇宙を体験するシーンは、もはや合法ドラッグの域。3DとかIMAXで観たら一体どうなってしまうんだろう…。

キャラクターもとても魅力的でした。予告やあらすじで耳にしていたほど、ストレンジが傲慢な人ではなかったなぁ…という印象。もっとすごい嫌な奴なのだと思っていたので、事故に関しては同情の方が強かったかも。間違いなくストレンジの危険運転が原因ではあるのだけど。ウォンのキャラが良かったなぁ。堅物そうに見えておとぼけなところもあって、なんとも愛すべきキャラクター。そしてワンが格好良かった…!パズルのように足場を組み替えながら扇子風に出力したシールドみたいなやつ(語彙力がない)で戦うのがすごく格好良かったです。

アメコミヒーローというと一直線でどちらかというと直情型、というイメージがあったのだけど、ストレンジは思考を重ねて戦法を決めるというのが面白かった。医者である矜持を守りつつ柔軟に闘うというのが格好良かったなぁ。ワンの選択を受け入れるあたりもストレンジの性格が出ていたなぁと思います。

ちょいちょい入る笑いも良かった。Wi-Fiのパスワードだとかビヨンセだとか、クスッと笑える小ネタがあって些細なやり取りも楽しめました。ストレンジ先生は自分にジョークのセンスがあると思ってそうだけど、終始小スベり感が漂っているのがなんともかわいらしかった。笑

そしてマントちゃんがとてもかわいい!性別設定があるか分からないけどものすごく乙女感を感じた…。マントちゃん可愛いよマントちゃん…!締め上げながら頭部を殴打するエンドレスバイオレンスに笑ってしまった。このマント殺る気まんまんだ…!強くてかしこいマントちゃんの今後の活躍も気になるところです。

次の敵はモルドかなぁと思いきや、エンドロール明けのソーとのやりとりも気になる…!ソーとストレンジ先生が共闘とかそういう展開なのだろうか。それにしてもモルドの高潔さがそう作用してしまうのか…と思うとなんともせつないです。

 

ドクター・ストレンジ:プレリュード (ShoPro Books)

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フリークス・シティ@ヒューマントラストシネマ渋谷

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■あらすじ
人間・ゾンビ・ヴァンパイアの種族が暮らす町・ディルフォード。多少のいがみ合いはありながらも平穏に暮らしていたある日、エイリアンの急襲を受ける。四つ巴のバトルが起こる中、同じ高校に通う人間のダグ、ゾンビのネッド、ヴァンパイアのペトラの三人が立ち上がる。果たして三人は、町を救うことはできるのか?

 ※ネタバレ含みます

未体験ゾーンの映画たち5本目は、ドタバタ青春ホラーコメディ。いつもより少し狭いシアターだったものの、場内ほぼ満員でした。あらすじの時点でめちゃくちゃ面白そうだもんな…。

期待を裏切らない面白さでした。全編に漂うB級感とテンポのいいストーリー、ニヤリとする小ネタの数々、そしてラストの謎の感動。ご都合主義さえも良いエッセンス!トンデモ設定なのに地方都市あるあるやアメリカのスクールカーストあるあるもコミカルに描いていて上手いなぁ。軽く観られてスカッとできる良作です。

三人が暮らすのはパッとしない小さな町で、名物は謎の肉を使ったサンドイッチ。高校生活も家族との関係もあまり上手く行っていない。何から何までショボい。そんな三人だけど、町のピンチを前になんとか守ろうと奮闘して成長していくのがとても良かった。三人ともそれぞれ魅力的なのだけど、ゾンビなのにブレインポジ(※食糧的な意味ではなく)のネッドくんがソーキュートでした。

後半のシーンでダグが熱弁を揮うもいまいち同意を得られなかったのに、ダグパパが突如として始めた\U....USA!USA!USA!/に次々に乗っかって\USA!USA!USA!/と一気に士気を高めるくだりが最高でした。これがアメリカノリ…!!!あと最後の最後の決戦での「なんであいつドイツ訛りなんだよ…」のくだりにも笑った。

何か見たことがある…と思っていたら、ビッチちゃん役の人(役名忘れてしまった…)がハイスクール・ミュージカルのガブリエラ役の人だった!あの頃から美人さんだったけどますます美しくなってー!!と親戚のおじさんみたいなきもちになってしまいました。

わりとサクッと「あっごめん殺っちゃった」「あっごめん食べちゃった」みたいなノリで罪のない一般人が死ぬので、そこを笑いに昇華できない人にはオススメできないのだけど、そこらへんをこういうもんだと割り切って流せる人であればオススメしたいです。普通に面白い。

 

アイヒマンを追え!ナチスが最も畏れた男@ヒューマントラストシネマ有楽町

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■あらすじ
1950年代後半のフランクフルト。検事長のバウアーは、ナチスによる戦争犯罪の告発を行うべく奔走していたが、法律・政治関係者は戦時中にナチスに関係していた者が多く、捜査を行うことに抵抗を示す。捜査は難航を極めていたが、ある日、アイヒマンがブエノスアイレスに潜伏しているという情報を入手する。ドイツの機関では捜査を行うことができないと判断したバウアーは、イスラエルの諜報機関・モサドに情報提供することを決意する。

※ネタバレ含みます

時系列的には「アイヒマン・ショー」の前のお話。アイヒマン逮捕までの一連の流れを描いています。ドイツ政府や検事局に勤める人々はその多くが戦争関係者であり、戦争犯罪を直視することを忌避する。真実から目を逸らしたまま終戦から十年以上が経った1950年代の後半、未だナチスをドイツ国民の手で裁くことを諦めない者がいた。そんなバウアー検事による執念の物語です。

バウアーが完璧な英雄ではなく、過去には政治犯として収容所に入れられ、転向書に署名をしナチスに屈した経験があり、さらには当時は法律で禁じられていた同性愛者であるという面を描いていたのが良かった。一度は砕けた人でも、誇りを取り戻して自分を律することができるし、マイノリティに発言権がないはずがないのだとバウアー自身が行動で示してくれました。

若者との討論番組でドイツの誇りは何かと問われたバウアーの答えが印象的。「森や山は誇りではない。我々が作ったものではないからだ」「ゲーテアインシュタインも違う。彼らは偉大だが、それは彼ら個人のものであり、ドイツが偉大なわけではない」「我々の誇りは一人一人が何を考えるか、そこにある」というようなことを返すのだけど、そんな言葉にも自国の未来を見据える気持ちが垣間見えてとても良かった。

骨太な物語や登場人物はもちろん、それらを彩る音楽が素晴らしかった。哀愁漂う少しレトロな音楽がマッチしていて格好良かったなぁ。そして、甘く切なく歌い上げる歌姫ちゃんがめちゃくちゃに美しかった…。衣装やその着こなしにも性格が出ていたりして、とても面白かった。バウアーの後ろ髪がかわいかったです。笑

完全なフィクションというわけではなく、カールは実在の人物ではない模様。でもバウアーとカールの絆はとても素晴らしかった。カールのしたことは結局は裏切りで完全にアウトなのだけど、ようやく本当の自分をさらけ出せる相手に出会えた喜びを思うと、あそこで店に行ってしまったことは責められない気がする…。カールはあの後どうなったんだろう。フィクションの人とは言えこの映画の中では確かに存在していたので、とても気になってしまいます。

 
■関連リンク

 本作の後、アイヒマンがどのように裁かれたのかはこちらで描かれています。

 

 こちらもバウアーを描いた作品の模様。こちらも観てみたいなぁ。

オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティ

 

 

■あらすじ
イスタンブールとカレーを繋ぐ国際列車・オリエント急行。様々な職業や国籍の人々が乗り合わせていたが、雪で立ち往生した車内で乗客の一人である老富豪が刺殺される。死体には12か所もの刺し傷があり、強い怨恨による犯行かと思われた。しかし、乗客たちのほとんどは被害者と面識はなく、全員にアリバイがあった。一体、犯人は誰なのか。偶然乗り合わせていた名探偵ポアロが推理に乗り出す。

 
※ネタバレ含みます

kindleにて。1934年発表の作品。「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」とともに年末に行われていたkindleアガサ・クリスティセールで購入したもの。一度読んだ本はなかなか手に取らないのだけど、こういうセールがあると嬉しいなぁ。

国籍も職業も異なる他人同士が乗り合わせる中で起こった殺人事件。被害者はアメリカで起こった誘拐殺人事件「アームストロング事件」の主犯であることが判明する。強い恨みを抱かれていたことは間違いないが、果たして犯人は一体誰なのか…。ポアロの推理の結果、なんと乗客全員(正確には13人中12人)が犯人であり、それぞれが運転手や家庭教師や料理人等、アームストロング家に縁のある人々であったことが判明。それぞれ異なる強さや利き手で行われていた12か所の刺し傷は、全員が一度ずつ刺したものであったのです。…という、「アクロイド殺し」の語り手=犯人に告ぐ超予想外の犯人なのでした。

天誅とは言え殺人は殺人…と思いきや、ポアロは推理の際に二つの可能性を示唆します。ひとつは、前述の全員が犯人であると言う推理。もう一つは、犯人は停車中の電車から逃走したと言う推理。これまでのやり取りを目にしてきたコンスタンティン医師とポアロの友人である国際寝台車会社の重役・ブックにどちらだろうかとわざと問いかけて、二人とも後者を選ぶのです。謎は解けても、真実は乗り合わせた人々の胸の内に…。というエンディング。トリックに続きこちらも賛否両論ありそうですが、わたしは好きでした。

登場人物が大勢なので何が何やら…になるかと思いきや、とてもキャラが立っているので混同することもなく楽しめました。ドラゴミロフ公爵夫人がとっても魅力的…!そしてハバード夫人がなんとも悲しい。本作は中年女性になんとも言えない深みがあって良かったなぁ。

「イタリア人だからアイツは怪しい」とか「これだからアメリカ人は」と人種括りの皮肉が当然のように横行しているのもこの時代ならでは。このやりとりは後世に至るまで変えないで欲しいなぁ。そういう表現はそれらの時代特有のものとして大らかな気持ちで受け止めたいなぁと思うのです。

著者の孫によるまえがきで述べられていた通り、アームストロング事件はこの事件が元になっていた模様。結局事件はあやふやなまま終わってしまったようで、現実の事件はなんと後味の悪いものかと…。

 

■関連リンク
www.belmond.com今なお走るオリエント号。一度でいいから乗ってみたいなぁ。殺人事件は嫌だけども…。

アブノーマル・ウォッチャー@ヒューマントラストシネマ渋谷

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■あらすじ
新居の下見に向かった新婚夫婦のライアンとクレア。不気味で異臭のする大家に不信感を抱いたが、念願の庭付き一戸建てを前に引っ越しを決定する。しかしその家はいたるところに大家により監視カメラが仕掛けられていた。カメラに気付くことなく日々を営む二人だったが、大家の行動は次第にエスカレートし…。


※ネタバレ含みます。

未体験ゾーンの映画たち3本目。じじいが新婚夫婦をおはようからおやすみまで熱く見守るサイコホラー。「キモい!」と「怖い!」が交互に押し寄せ、常に不快と不愉快と不安に支配され続ける90分間でした。

へ、変態だー!!!というレベルでは済まされない方向にぶっとんでいた。大家が徐々に箍が外れ常軌を逸していき、もう誰にも止められない…となる後半の盛り上がりも良かったんだけど、序盤から中盤にかけての不気味さと執拗さが最高でした。特にじじいが新妻の歯ブラシを舐めてから頬にゾリゾリするシーン、最悪ですね!今まで観たどんなグロい映画より不快指数が高かった。そんな妙な匂いに気付いた妻に対する夫の「人間の口の匂いなんてそんなもんだよ」という発言がアホすぎて和んだ。そんなわけがあるか。そして「そうなんかな…?」みたいな顔をする妻。そんなわけがあるか。

そんなアホ夫は妊娠中の妻の留守を狙って勤務先の美人アシスタントと浮気を開始。確かにクレアも我儘勝手なところはあったけれども、これは…と思っていたら、そんなところも執拗に見つめ続けていた大家。一体何を考えているのか分からないまま、徐々にアグレッシブに行動し始めます。家に訪れた不倫相手に襲いかかり、監視先の家の中央にある秘密の防音室に監禁。ここで初めて他者に対する攻撃性をあらわにするのですが、意外と動けるタイプであることが判明しめちゃくちゃびびった。
襲いかかる大家「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
襲われる不倫相手の女「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
観ていた私「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
陰からじっとり見つめるタイプじゃないのかよ!!!!

なんだかんだで旦那が頑張って妻とお腹の中の子を助けてハッピーエンドでしょ?…と思ったのですがそんなはずはなかった。最悪のさらに先のラストからの爺のいい笑顔でフィニッシュです。結局大家の狙いが最後までよくわからなかったのだけど、お腹の子供を守らねば?助けねば?俺のもの?という感情が歪んだ形で現れたということ…?この部分、あまり言及されていなかったように思うんだけどどうだっけな。はっきりしないので目的がわからなくて余計に怖い。

後味の悪さ含め、最初から最後までやりきってくれたなぁ!ちくしょう!最悪だ!(※褒め言葉)

 

アブノーマル・ウォッチャー [DVD]

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書楼弔堂 破暁/京極夏彦

 

文庫版 書楼弔堂 破曉 (集英社文庫)
 

■あらすじ
御一新から四半世紀を迎えた明治二十年代半ば。元旗本の高遠は、雑木林に囲まれた別宅で日々無為に過ごしていた。ある日、ひょんなことから近所に奇妙な書舗を見つける。書楼弔堂と名乗るその店は、古今東西の様々な書物が所蔵されており、店の主人はここは本の墓場であると言う。そんな奇妙な本屋に、高遠と同じ時代を生き、様々な悩みを持つ人々が探書に訪れる。

【1】探書壱 臨終
近所を散歩していた高遠は、軒に「弔」の一文字が書かれた半紙が貼られた奇妙な建物を見つける。おそるおそる足を踏み入れてみると、そこは夥しい数の本の納められた本屋だった。圧倒される高遠の前に、幽霊を見たのだという老人が現れる。そんな老人に店主が差し出した本とは。

【2】探書弐 発心
郵便局の前でおかしな書生に出会った高遠。著名な作家に師事しているものの、先進的な作風の師を持ちながら古い物とされている江戸会談を愛する自分に負い目を感じているのだと言う。そんな書生を弔堂へ導く高遠。書生にはどんな本が差し出されるのか。

【3】探書参 方便
以前勤めていた煙草会社が店を畳むことになり、送別会がてら元雇い主である山岡と共に女義太夫を観に行った高遠。帰り道に山岡の知人である矢作に出会い、矢作が心酔している師の話を聞かされる。弔堂を訪れると、偶然にも山岡の師である人物に遭遇する。

【4】探書肆 贖罪
近所の鰻屋を訪れた高遠は、そこで身なりのいい老人と、その老人に影のように付き従う奇妙な男に出会う。弔堂に行きたいという二人を案内した高遠だったが、老人はその男は死んでいるのだと言う。男の身に一体何があったのか。そして男の正体とは。

【5】探書伍 闕如
顔馴染みの書店員から高遠に会いたがっている作家がいると聞かされる。その作家は奇遇にも高遠が最近読んで感銘を受けた本の書き手だった。探している洋書があり、弔堂へ行きたいという作家の案内人をを買って出る。探していた本に巡り合えて喜ぶ作家だったが――。

【6】探書陸 未完
ひょんなことから猫を預かることになった高遠だったが、弔堂に本を売る客が猫を引き取ることに。猫の引き渡しついでに本の積み下ろしを手伝うことになった高遠。向かった先は、神社だった。依頼人の胸に秘めた思いとは。


※ネタバレ含みます

12月に発売されていたなんて知らなかった…!いつもkindleばかりなのですが、久し振りに紙の本です。京極さんの本は紙で読みたい。相変わらず奇数ページできちんと文章が終わっているページデザインはお見事。文庫でここまでするのは凄いなぁ。見惚れてしまう。

弔堂を訪れるのはいずれも幕末~明治初期に活躍した文化人や政治家など実在の人物。しかし、名前が明かされるのは物語が終わりを迎える時です。これは誰だろう?と楽しむのが面白かったのですが、本書の公式サイトではドーンと書かれていて驚いた。これを最後に目にするからいいような気がするんだけど、どうなのでしょう。好きな作家さんの本は公式情報さえも入れずにそのまま読むのが一番いいなぁと改めて思った次第。一話目から圓朝月岡芳年が登場して、芳年好きとしてはたまりませんでした。

フォークロアのように含みを持たせるような終わり方が、余韻があってとても良い。人の不安や焦燥を描いていながらも、最後にはそこにスッと光明が差すのも良かったです。歴史に名を残したあの人もこの人も、ただただ邁進して功績を遺したわけではなく、こんな風にぐるぐると思い悩んだりしたのかもしれないなぁなどと思ったり。

「この世に無駄な本はない」という言葉は本好きとしてはとても嬉しかった。本に貴賤はないんですよ…ほんとに…。ラノベも絵本も料理本にも情報は等しく存在していて、何かしらの感情を喚起させられると思うんです。あとこの作品では出版の移り変わりなんかも描いていて、そのあたりも面白かった!

同著者の他のシリーズのキャラクターも登場し、作者のファンとしても楽しめました。3話目の「方便」では巷説シリーズの不思議巡査が登場し、井上圓了に師事しているという設定。六話目の「未完」で登場する中禅寺輔氏は、どうやら百鬼夜行シリーズの中禅寺秋彦と関係がありそう。世代的に祖父なのでしょうか。その他、由良伯爵なんかも登場して、あちらのシリーズのファンとしても楽しめました。猫は石榴の祖先だったりして…?と思ったんですが、そこはインタビューで否定されておりました。さすがにないかぁ。

いわゆる高等遊民の高遠の気ままな暮らしが羨ましかった…。本を読んで無為に過ごすなんて最高の贅沢だと思うのだけど、そんな高遠もモヤモヤとした不安を抱きながら過ごしているようで、人間生きている限り悩みは尽きないのだなぁなどと思ってしまった。結局彼がどうなったのかは描かれていないけれど、「これで良し」と思えるような人生を歩んでいてくれたらいいなぁ。何かすごいことをしたり生み出したりして結果を残すだけが人生ではないと思うし、存在していれば人生だし、高遠にはそんな風に生きて欲しい…などと勝手ながら思ったり。

高遠が狂言回しとなるのはこの「破暁」まで。自作の「炎昼」は若いお嬢さんが語り手になるようです。小泉八雲柳田國男あたりが登場してくれたりしないかなぁ…と密かに期待しつつ、文庫化待ち。でも我慢できずにkindleで分冊を買ってしまいそう…笑。

■関連リンク

www.shueisha.co.jp公式サイト。各話で取り上げられる登場人物について明記されていますが、知らない方が楽しめる気がします。

www.sinkan.jp本作に関するインタビュー。これ面白い。

以下、登場した人物のwikiをメモがてら貼っておきます。

月岡芳年 - Wikipedia

泉鏡花 - Wikipedia

井上円了 - Wikipedia

勝海舟 - Wikipedia

岡田以蔵 - Wikipedia

巌谷小波 - Wikipedia