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映画や本やおいしいものについて

ルーム@ヒューマントラストシネマ渋谷


映画『ルーム』予告編

■あらすじ
5歳の男の子、ジャックはママと一緒に「部屋」で暮らしていた。体操をして、 TVを見て、ケーキを焼いて、楽しい時間が過ぎていく。しかしこの扉のない「部屋」が、ふたりの全世界だった。 ジャックが5歳になったとき、ママは何も 知らないジャックに打ち明ける。「ママの名前はジョイ、この「部屋」の外には本当の世界があるの」と。混乱するジャックを説き伏せて、決死の脱出を図るふ たり。晴れて自由の身となり、すべてが解決して幸せになれると思っていた。ところが-。
Wikipediaルーム(映画)」2016年3月25日 (金) 03:46より

 これは絶対に観たい!と思って公開初日に鑑賞。期待値以上のものすごく良い映画でした…。予告で大体のストーリーは分かってしまうんだけど、それを知った後で鑑賞してもとても良かった~。語彙力ゼロになっちゃうけどすごくよかったんだ~~~!!!

予告を見れば「親子が部屋から解放されて無事に生きていくお話なんだな」というところまでわかってしまうし、実際に要約するとそういう話なんだけど、親子そ れぞれの心情や葛藤や成長が丁寧に描かれていて、すばらしい作品でした。親子が部屋から解放されることが分かっていても、パトカーの中で女性警察官が真実 に気付くシーンに手に汗握ってしまった…。ものすごく引き込まれる作品でした。

小さな少年が救われてはじめて世界に出会う話、というと聞 こえはいいのだけれど、狭い納屋に監禁されていた少年から見たら、世界はあまりに広大すぎて立ち竦んでしまうわけで…。それは子供だけでなく、17歳の頃 に監禁されて7年間も密室で過ごした母親にとっても同じことで、そう言う解放の先の苦しさみたいなものがたくさん描かれていて、観ているこちらも辛くなる シーンが多々。

どうしても孫を直視できない祖父も悲しかったな…。血が繋がっているがゆえの苦悩でもあるだろうし、ただ一言で「ひどい」 と断じることもできない気がするんだー。だからとても悲しかったな…。一方で祖母の恋人・レオはフラットに受け入れて、それはもちろん正しいことなのだけ ど、どちらが良くてどちらが悪いというのはないようなく、それぞれの愛情の形なのだなぁと…。

そういった重くて辛くて苦しいシーンもたくさんあるのだけど、ゆえに笑顔のシーンが非常に生きていたと思います。レオ(祖母の恋人)がジャックを怖がらせないように気遣いつつ、わざとらしく「うーん、暇だなぁ、 誰かいないかなぁ…そうだ!とびきりおいしいものがあったんだ!」と大袈裟な演技をするシーンはとても微笑ましくてかわいらしかったし、レオの犬と初めて 出会った瞬間のジャックの笑顔も最高でした。

そうして誰かと食べるごはんがおいしいことや、犬と散歩するのが楽しいことや、友達とボール 遊びをすることまで覚えて行くのですが、おばあちゃんに初めて「愛してるよ」と告げるシーンがとてもよかった。小さな少年にとってわけがわからないくらい 広い世界で、唯一無二の存在だった母親以外の他者を愛せるようになったってものすごい成長だったのだと思う。すごく良いシーンでした。

あとこの作品、外の世界の美しさを誇張して描かないのがとても良かったです。監禁されているシーンの天窓から見えるのはたった一枚の枯葉だったり霜だった り、病院から外を見下ろした時の光景もいたって普通の町の景色で、過度に誇張して美しいもののように扱わなくて、だからこそ観客も「普通」の光景の大事さに気付けるのではないでしょうか。

個人的には現時点の2016年暫定一位作品です。