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東洲しゃらくさし/松井今朝子

 

■あらすじ
大阪の人気戯作者・並木五兵衛が江戸に下ることになる。江戸の様子を見て欲しい と頼まれた道具方の彦三は、言われるがままに江戸へと向かう。招かれたのは、有名版元の蔦屋重三郎の元だった。そこで五兵衛の絵を見た蔦屋は、大々的に売 り出しにかかることを決める。そうして生まれた絵師の名は「写楽」だった――。

 写楽の正体は上方の道具方だったという本作。上方と江戸の 違いや江戸の町人文化が丁寧に描かれていたので、当時の様子をありありと思い浮かべることができてすごく面白かった~。歌舞伎と言われるとどうしても江戸 と思ってしまうけど、上方でももちろん上演されていたんですよねえ。

どこかうすぼんやりとした彦三が徐々に目覚めて行く様に手に汗握ってしまったし、本筋とは少しそれるけど菊之丞と五兵衛のくだりが切なかった…!菊之丞の妖しくもあり儚くもあり、それでいて凛とした美しさがとてもよかった…。

しかしけっこう視点が飛ぶことが多いせいか、誰の視点だか分からなくなったのはわたしだけだろうか…。

写楽本と言えば、島田荘司の閉じた国の幻がすごく面白かったな。荒唐無稽な話だと言われればそれまでだけど、とても面白かったんだー。フィクションである以上どんな想像をしようと構わないと思っている。

 

■関連作品

写楽 閉じた国の幻〈上〉 (新潮文庫)

写楽 閉じた国の幻〈上〉 (新潮文庫)

 
写楽 閉じた国の幻〈下〉 (新潮文庫)

写楽 閉じた国の幻〈下〉 (新潮文庫)