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ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞@Bunkamura ザ・ミュージアム

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■展示構成
一幕目の一:髑髏彫物伊達男(スカル&タトゥー・クールガイ)
一幕目の二:物怪退治英雄譚(モンスターハンター&ヒーロー)
一幕目の三:畏怖大海原(ホラー・オブ・ウォーター)
一幕目の四:異世界魑魅魍魎(ゴースト&ファントム)
二幕目の一:三角関係世話物(トライアングル・オブ・ラブ)
二幕目の二:千両役者揃続絵(カブキスター・コレクション)
二幕目の三:楽屋裏素顔無双(オフステージ)
二幕目の四:痛快基地娯楽絵(ザッツ・エンターテインメント)
二幕目の五:滑稽面白相(ファニー・ピープル)
二幕目の六:今様江戸女子姿(エドガールズ・コレクション)
二幕目の七:四季行楽案内図(フォーシーズン・レジャーガイド)
二幕目の八:当世艶姿考(アデモード・スタイル)


幕末の浮世絵界を華々しく彩った二人をメインとした展示。金曜日は21時まで開いているということで、会社帰りに立ち寄ってきました。

 ロッカーがいっぱいで困ったんだけど、クロークで預かっていただけてとても助かりました…!というわけで軽装で優雅に鑑賞。さほど混んではいなく、一列になってはいるもののゆっくりと観れる感じでとてもよかったです。

ボストン美術館に酒造されていた170点(!)に上る二人の華々しい画業を一気に展示。ボストン美術館では一度展示した作品は劣化を防ぐため五年は展示しないとしているそうなので、今回は五年に一度の大チャンスです。

 

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このポップなポスターから分かる通り、とても現代的な雰囲気でまとめられていました。こういう色合いとも合っちゃうから浮世絵はすごい。展示ごとのタイトルもジョジョみたいで格好良いし、面白いなぁ。音声ガイドは中村七之助さんで、テーマ曲はB'zの松本さんでゴリゴリのロックというのも面白かった。

以下、特に印象に残った作品を記してみます。二者がテーマごとに混ざっての展示だったのですが、作者ごとに額縁の色を変えていたので一目で誰の作品か分かりやすくて助かった!国貞作品には作品名の前に[貞]、国芳作品には[芳]をつけてみました。

■一幕目の一:髑髏彫物伊達男(スカル&タトゥー・クールガイ)

【[芳]国芳もやう正札附現金男 野晒悟助】
髑髏柄の着物を纏った伊達男の姿。近くで見るとこの髑髏、複数の白猫が集まってできているのです。きりりとした人物なのに、ちらりと覗く遊び心が面白い。

■一幕目の二:物怪退治英雄譚(モンスターハンター&ヒーロー)

【[芳]相馬の古内裏】
妖怪関連の展覧会だと必ずと言っていいほど飾られているこの作品に、やっぱり今回も遭遇。迫力があって今の時代に見ても格好良い。山東京伝の忠義伝のワンシーン。原作では大勢の骸骨が迫りくるシーンらしいのですが、国芳は大きな一体の骸骨にまとめ上げたとのことで、こんなところでもオリジナリティを追及していたようです。あとここで描かれている骸骨、医学的に見てもほぼ正確と言っていいほどきちんと描いているそうで、そこもまた凄い。

【[芳]鬼若丸と大緋鯉】
相馬の~に続き、こちらも3枚綴りの大きな作品。鬼若丸=武蔵坊弁慶の幼名とのこと。水の青、緋鯉の赤、うねりを表す黒色の織り成す色合いが重なり合うダイナミックな描き方がすごい。漫画的な躍動感に溢れていて格好良い。ポストカード買いました。

【[芳]見立東海道五拾三次岡部猫石の由来】
てぬぐいを被って踊る三毛の猫又がめちゃくちゃかわいい。この人ほんとに猫好きだな!笑

■一幕目の三:畏怖大海原(ホラー・オブ・ウォーター)

【[芳]讃岐院眷属をして為朝をすくふ図】
嵐に合い人身御供となるために波に身を投じた妻を前に夫は絶望のあまり切腹をしようとするが、烏天狗に救われる。さらに鰐鮫が現れ、その背に乗って無事に逃げ返るとができた…というワンシーン。青々とうねる大波や、細かく描きこまれた鰐鮫の鱗も見事なのですが、まったく色を持たずに淡く描かれた烏天狗がなんだか神性を持っているというか、まさに奇跡の瞬間という感じですごい。溜息出ちゃう。すごい。

■二幕目の二:千両役者揃続絵(カブキスター・コレクション)

【[貞]御誂三段ぼかし】
当時のブロマイドである役者絵のひとつ。涼しげな着物姿の役者達の背景には家紋が明るい色合いでいくつも刷られていて、展示では「戦隊モノのよう」なんて言われていたけど、まるでバックにお花を背負った主人公の想い人を描いた少女漫画のようだった~。

■二幕目の三:楽屋裏素顔無双(オフステージ)

【[貞]踊形容楽屋之図 踊形容新開入之図】
劇場を横からの引きで観た構図。当時の人にしてみたらバックステージレポのようなものだったのかな?多くの人々が行き来する忙しなくも華やかな様子が描かれていて、普段は入れない場所を見れた感があってとても面白かったー。2階建てのように見えたけど、さりげなく右下に半地下(?)のようなものもあって、当時の建築物の様子なんかも垣間見れて面白い。

■二幕目の五:滑稽面白相(ファニー・ピープル)

【[芳]荷宝蔵壁のむだ書】
これwwww完全にただの落書きだし、現代の漫画家さんもさらさらっと書きそうなタッチで、一気に親近感を覚えてしまうー。前に六本木でやっていた国芳の展示でも同じものを見たんだけど、このいい感じの脱力感がすごく好きです。描かれた当時はお上からの規制が厳しくなってきた時期だったのに、さらりとゆるくこんな絵を描いた国芳の粋っぷりがとても格好良い。真剣に展示に見入っていた人たちもこの作品の前では思わず笑ってしまっていたりして、いつの時代も人々を笑顔にさせる作品は良いなぁと改めて。


■二幕目の七:四季行楽案内図(フォーシーズン・レジャーガイド)

【[貞]雪遊び】
真っ白に積もった雪の中、艶やかな着物姿ではしゃぐ女性達。雪玉を投げ合ったり、ころころと笑う姿がなんとも可愛らしい。裸足の人もいたりしてめっちゃ寒そうなんだけど、何より笑い声が聞こえて来そうなくらい楽しげなのがとても良い。

■二幕目の八:当世艶姿考(アデモード・スタイル)

【[貞]見立邯鄲】
涼しげな透かしの内輪を口元に当てた女性。細やかな格子の向こう側から覗く紅をさした唇がなんともうつくしい。そしてこの格子の繊細さがすごくて、木版だということを忘れてしまうほど。彫り師も刷り師もすごい…!

頭から一通り見終えた後、一幕あたりの好きなゾーンをゆっくりと鑑賞。もう閉館間際だったので人もほとんどおらず、ひとり占め状態で鑑賞できました。

二者の展示となるとやはり「どちらが自分好みか」ということを考えてしまうのだけど、わたしはやっぱり国芳かなぁ。構図や描き方が漫画的で今見ても真新しくて、とても面白いなぁと思うのです。

 

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ガチャは猫系のどちらかが欲しいなーと思っていたんですが、猫又ちゃんを無事ゲット。ちゃんと尻尾が分かれていてかわゆい。立体で見るとますます現代でも十分通用するかわゆいフォルムです。

 

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図録とポストカードを購入。スカルの手ぬぐいが欲しかったんだけど完売とのことで残念無念。図録のデザインが恰好良い!あとすごーく細かいことなのだけど、複数枚の場合くっつけると線がずれてしまうので空けてほしいなーなんて思ったり…。

 

…と言う感じで、非常にエンジョイできました。怪奇絵は昔から好きだったのですが、ちょうど翌日に初めての歌舞伎鑑賞を控えていたり、ちょうど東洲しゃらくさしを読んだ頃だったりでいろいろとタイミングがよくて、役者絵も非常に楽しめました。