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映画や本やおいしいものについて

独裁者と小さな孫@早稲田松竹

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映画『独裁者と小さな孫』本編映像

■あらすじ
独裁者による支配が続いていたとある国で、大規模なクーデターが起こる。懸賞金をかけられて国中から追われる中、大統領は孫と共に海を目指す。身分を隠してみすぼらしい旅芸人の姿に変装し、様々な人々と身を寄せながらの逃亡生活で彼らは何を目にするのか。

 観逃がしてしまったところ、早稲田松竹で上映!名画座には本当に救われる…。ありがたや~。

逃亡を続ける内、自分の国の民がどんなに疲弊しているのか、そして軍部がどれほど腐敗しているのかを目の当たりにする大統領が哀れ。納屋で一夜を過ごし、釈放された政治犯を背負ってやることもある。そうして人々の重さを知っていくロードムービー…というと聞こえはいいけれど、道中に起こるのは無益な虐殺ばかり。その度に大統領は孫の目を塞ぎ「見るな」と言い続けます。目を閉じさせても耳を塞がせても口を噤ませても、二人の周りには現実が押し寄せていき、やがてそれはついに二人を飲み込みます。

この大統領は完全なる悪で裁かれるべきで、だから捕まった方が良い、と思っても、捕まりそうになる度に手に汗握ってしまう。それというのもひとえに孫の可愛さゆえ。幼いころから権力を分け与えられて育ったこの孫は、言ってしまえばクソガキなのですが、子供ゆえにまだ愛らしい。亡命への逃亡劇も「ごっこ遊びだ」と言われて素直に信じてしまうのも、無垢さゆえの悲しさがあったなぁ…。

あと、政治犯が妻の元へ帰るシーンが凄かった。ひたすらアップで展開するカメラもすごくよかったし、表情と台詞だけで眼前に広がる光景やその絶望を伝えたのがもう素晴らしい。

エンドロールで気付いたのですが、この映画で唯一名前を持つ少女の名が「マリア」というのはなんとも皮肉だなぁと思いました。少年はマリアを探し続けたけれど、結局夢でしか会えなかったというのもまた皮肉。