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ひそひそ星@アップリンク


園子温監督作/映画『ひそひそ星』予告編

■あらすじ
大きな災害が続いた銀河系は機械に支配され、ロボットが8割を占めるようになった。わずか2割まで激減した人間は絶滅危惧種に認定され た。そんな中、アンドロイドの鈴木洋子は宇宙船に乗って人間の住む星を巡り、荷物を届ける配達員として働いている。宇宙船『レンタルナンバーZ』に乗り込 み、相棒のコンピューター『きかい6・7・マーM』と共に宇宙を進む。

園監督はわたしが名前と作品を一致させることのできる数少ない監督だったりします。しかしこのところ作品を観る機会がなく…。久し振りの園監督作品の鑑賞となりました。

本作は監督が20代の頃(四半世紀前!)に書き留めた物語が元になっているとのこと。日常を非日常的に描くというか、非日常を日常的に描くというか…なんと も不思議な作品でした。長屋を模したような宇宙船の中で営まれるのは、掃除は箒と雑巾で行い、オープンリールのテープレコーダーに日々の出来事を吹き込むという、昭和テイストな暮らし。降り立つ星もどこかノスタルジックな空気を残す場所ばかりです。一部を除き全編モノクロで、古いのに新しい、不思議な映像 の数々。

そして、タイトルの通り登場人物たちは全員「ひそひそ声」で言葉を交わします。ゆえに他の音がとても目立つ。宇宙船の静かなモー ター音、蛾の羽ばたき、波の音、水道から零れる水滴の音、鏡の割れる音…様々な音がとても生き生きと耳に届くのがなんだか新鮮でした。ずっとあったはずの 音をこんなにも意識するようになるのは、静かだからこそ。それと同じように、人間の数が減ったからこそ、手間をかけて宅配便を送ろうと思えるようになった のかな。

スタッフロールはなし。ロケ地である福島県の富岡町・南相馬浪江町といった被災地の地名、そして「仮設住宅に居住する方々とい う撮影協力への献辞のみ。シオンプロダクションの一作目、名刺代わりになるであろうこの映画で、作品のみをスッと出すようなこの潔さがすごい。今後の作品 も楽しみです。

余談ですが、スクリーンの外のカフェでイベントをやっていてその音がすごく気になってしまった~。すごく静かな映画だったので残念…。

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監督&主演の神楽坂恵のインタビュー記事。

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