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映画や本やおいしいものについて

岡山女/岩井志麻子

 

岡山女 (角川ホラー文庫)

岡山女 (角川ホラー文庫)

 

 

■収録作品
明治末期の岡山。妾業で両親を養っていたタミエだったが、商売に失敗した旦那に斬りかかられ、左目を失ってしまう。左目の視力と引き換えに死者が見えるようになったタミエは霊媒師となり、人々の相談に乗るようになる。タミエの元を訪れる人々を描いた連作短編ホラー。

【1】岡山バチルス
タミエの元に年若い少女・由子がやってくる。骨董屋に行ってから親友の利子と同じ夢を見るようになったのだという。謎を解くべく、タミエは骨董屋へと向かう。

【2】岡山清涼珈琲液
ハイカラ商品として名高い『清涼珈琲液』を岡山で唯一販売している相田商店の若主人がタミエの元を訪れる。一週間前に姿を消した姑が嫁に取り憑いたと言うが…。

【3】岡山美人絵端書
流行の美人絵端書を扱う舶来雑貨店へ足を運んだタミエは、とある青年に出会う。後日タミエの元に相談に訪れた青年は、行方不明になった母親をに会いたいと告げられる。

【4】岡山ステン所
「こしらえ映え」のする女・芳子。豪農の男に囲われていたが、その男に連れられて乗った機関車で出会った列車ボーイと駆け落ちをしてしまう。

【5】岡山ハイカラ勧商場
中心街にオープンした勧商場には、大勢の人々が訪れる人気スポットとなっていた。人々の良く欲望が集まる場所には、あの世の物も引き寄せられる。そんな勧商場でタミエが目にしたものとは。

【6】岡山ハレー彗星奇譚
ハレー彗星が接近して町が浮足立ったある日、貧しい村からやってきたという夫婦がタミエの元を訪れる。3年前に神隠しに遭った長男について、手紙が届いたのだという。しかし夫婦は何か隠し事をしているようで…?

岡山を舞台にした連作短編集。岡山という地方都市にようやく訪れた文明開化の華々しさと、地方特有の仄暗さの対比がとても良かった。岡山弁がさらに雰囲気を増してくれて、全編を通して日本独特の湿度があったような気がします。

片目を失って華やかな妾商売から手を引かなければならなかったタミエの視点で描かれていることもあって、「美」への固執が強く、女の情念が潜んでいるような表現にゾッとします。あと、タミエから見た両親の描写が好きでした。からりと乾いた関係のようで、それでいて深い絆があるような…。なんだか魅力的。

一番好きだったのは「岡山美人絵端書」でした。絵葉書に描かれた女たちの情念が恐ろしいほど美しい…。「岡山ハレー彗星奇譚」では流されるままに生きて諦観の境地にあるようなタミエが生きるために必死になったということに、ほのかの救いの光が見えてとても良かった。

岡山はとても大好きな場所なのでまた行きたいなぁ。この本を持って行ったら闇に何かを見つけてしまいそうだけど、それもまた良し。