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写楽殺人事件/高橋克彦

 

 ■あらすじ
浮世絵研究家の津田は、骨董市で手に入れた写真集に写楽の名の記された蘭画を発見する。浮世絵界最大の謎である写楽の正体の手掛かりを得た津田は調査に乗り出すが、写楽の謎を解く内に予期せぬ殺人事件へと巻き込まれて行き…。

浮世絵界最大のミステリーである写楽の正体と、連続殺人事件を絡めたミステリー。写楽の正体絡みの本はどれも面白いものばかりなのですが、やはりこの作品も面白かった!

殺人事件がメインかと思いきや、写楽に関する記述が非常に多く、美術史を読んでいるかのような気持ちになりました。というのもこの作者、浮世絵の研究者で教鞭を振るっていたこともあったのだとか。秋田蘭画のことも全然知らなかったのですが、そのあたりについてもきっちり描かれていてわかりやすかったです。

後半は殺人事件の動機がメインとなり、これまで浮世絵研究への情熱が丁寧に描かれてきた分、より一層ずしんと重い展開に…。「そこまでするのか」と思われるかもしれないけれど、研究者の熱意とは時に世界のルールさえも逸脱してしまうものなのかもしれないなぁ。