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FOUND ファウンド@ヒューマントラストシネマ渋谷

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■あらすじ
ホラー映画が好きな11歳の少年、マーティ。学校ではいじめられて、家族仲も上手くいっていない。しかし、マーティにはある楽しみがあった。それは、兄がクローゼットに隠している生首を眺めること。時折入れ替わる生首を眺めながら過ごしていたある日、同級生の生首を見つけてしまう。どうやら、秘密を知られていることに気付かれてしまったらしい。

 

※ネタバレ含みます


「未体験ゾーンの映画たち2017」1本目。劇場は満員御礼!朝の時点でかなりチケットが減っていたので慌ててオンライン予約したのだけど、上映15分前に到着した頃にはすっかり完売でしょんぼりと劇場を後にする人も…。初日とは言え21時の回なのにすごいなぁ。

ひたすらホラーでスプラッタな感じかと思いきや、家族や学校と言った少年の抱える問題も取り上げられていて、きちんとストーリーのある作品でした。イヤアアアおにいちゃんやめてええええ首を切らないでええええギャアアアアアみたいな話ではないです。そっち方面に期待を込めて行くとがっかりしてしまうと思う。ホラーでスリラーでサスペンス、そしてヒューマンドラマでもある、なんとも不思議な作品でした。魅力的。

開始直後の弟のモノローグの一言目でググッと引き込まれての103分間。決してすっきりした作りではないけれど、そこもまた不安定なこの兄弟を表すのに適していたんじゃないかなぁと思えてしまう。そして何より、ラストのワンカットが秀逸。「あっ」と思ってふっと終わってしまう。余韻も何もかも掻き消すような一瞬のショットのインパクトが凄い。

兄の部屋で見つけたホラービデオ「HEADLESS」を友人と観るシーンがあるのだけど、これがタイトルの通りの首切り殺人の話。本作で最もゴア描写の詰め込まれたシーンだったと思います。仮面を被った殺人鬼が女性を惨たらしく殺害し、乳房を切り落としてしゃぶりつき、首を斬り落として生首ファックという狂気っぷり。(ところでこの映画の後に砂嵐になるのだけど、兄によるスナッフムービーが始まるんじゃないかと身構えたのはわたしだけだろうか…)そんな映像からしばらく後、マーティを襲うのは本物の凶行。それらはこれまで観たホラー映画のように映像として眺めることはできないけど、確実に今家の中で起こっている…という撮り方が上手い。ところでこのシーン、全裸の兄が真っ黒の影のように塗り潰されていたんですが、元の映像ではフル勃起らしいです。そっちの方が狂気マシマシだったのだけど、さすがに日本の劇場では無理だったか…。でも某ドラゴンタトゥーの女のような粗い修正じゃなかったので不自然さはなく、知らなかったら気にならないレベルでした。

舞台は1980年代なのですが、この時代ではなく現代設定だったらかなり違う雰囲気になった気がする。あの時代設定だったからこそ描けたストーリーだと思います。ノスタルジックなビデオ屋や映画館や古い型の車が鬱屈や狂気を際立たせていて、兄がより一層哀しい存在に見えた。弟はホラー映画の世界に憧れを抱いていたけれど、本当にそちら側に行ってしまっていた兄のことは結局理解できなくて受け入れられなくてただただ恐怖でしかなくて、それでも兄は兄なりに弟を想って…という歪な感情が、怖いというより悲しい。まさかこの映画でこんななんとも言えないせつない気持ちになるとは思わなかったです。

製作費わずか8000ドル、役者も監督もほとんど無名で、そんな制作環境だったからこそ作り出せた作品なのではないかなぁと思います。いずれにせよ、洗練された脚本やこなれた演技の名優では作り出せなかったのではなかろうか。映画館で観れてとても嬉しいです。いいものを観た!未体験ゾーンは毎年こういう出会いがあるので嬉しいです。

遅ればせながらわたしの今年の未体験ゾーンが幕を開けました。今年も楽しみだー。たくさん観るぞう!。

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■関連リンク

未体験ゾーンの映画たち2017

2017年2月3日~2月17日まで青山シアターにてオンライン上映される予定とのこと。

 

 

www.youtube.com作中に登場するホラー映画「HEADLESS」。本作のDVD特典になった後、2015年に単発でリリースされたらしいです。気になる。

 

セブン・サイコパス [DVD]

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 サイコパスのせつなさという意味でなんとなくこちらの映画を思い出したりもした。こちらはだいぶポップだけども。