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神様の裏の顔/藤崎翔

神様の裏の顔 (角川文庫)

神様の裏の顔 (角川文庫)

 

■あらすじ
誰からも信頼されていた男・坪井誠造が急死した。坪井の知人やかつての教え子が弔問に訪れ悲しみに訪れた通夜だったが、年齢も性別も異なる赤の他人が故人の思い出を語る内に、坪井の恐ろしい裏の顔が明らかになっていく。果たして、坪井の正体は――?

 
※ネタバレ含みます

kindleのセールでなんとなくゆるっとふわっと購入。当初の印象通り、サクッと読める一冊でした。故人の娘、元教え子、元同僚、近所の住人、アパートの店子…と、年齢も性別も関わり方も異なる人物が織り成す人間模様が面白い。しかしその中心にいる坪井は既に帰らぬ人となっていて、何も語ることはできないまま。そんな中で弔問客たちが言葉を交わし合い、あれこれと推理していく内に事態はあらぬ展開に向かうという群像劇。

読経、焼香、喪主挨拶、通夜振る舞い…と、お通夜のそれぞれのシーンからストーリーが展開していくというのが面白かったです。読経で故人を偲び、焼香で周りの人々を気にし始め、喪主挨拶で違和感を抱き、通夜振る舞いで言葉を交わし合い…徐々に核心に近づいていくのがお見事。坪井の疑惑は登場人物にとっては意外な展開なのだけど、それぞれの語ったヒントにより読み手には先の予想しやすい展開で、面白いけど少々物足りないな…と思ったところで、迎える真のラストはまったく予想していなかった方向に着地して、サスペンス的にゾッとするオチに。なんとなく怪しいと思ってはいたけど、予想を凌駕する思いもよらない着地点でした。

作者の方は元お笑い芸人だったのだとか。登場人物に芸人見習いがいたり、その芸人見習いががトイレに携帯を落としたくだりのやたらと細かくまどろっこしく説明するあたりはそれっぽかったかも。