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ジェーン・ドウの解剖@シネマカリテ

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■あらすじ
ヴァージニア州の田舎町で、一家惨殺事件が発生する。凄惨な現場の地下から身元不明の女の変死体が発見され、検視官のトミー親子の元へ運ばれた。死因を探るため解剖を進める内、遺体から奇妙な点が次々と現れる。徐々に女の正体を示す手がかりを掴んでいく二人だったが、不可解な現象が起こり始め――。


※ネタバレ含みます

シネマカリテで開始された「松竹エクストリームセレクション」の第一弾として上映された本作。パンフレットの販売もなく、予告も第二弾の作品のみ。そっと連れてこられた作品感満載でこの時点でワクワクです。

「ジェーン・ドウ」とは日本で言うところの「名無しの権兵衛」的な仮名のことなのだそうな。身元不明のはずなのに何故すぐに名前がついたのか良く分からなかったのだけど、なるほどなぁ。そんな謎の遺体を解剖する検視官の元に巻き起こる出来事を描いたホラーです。一切の損傷のない皮膚を開くと、凝固していない新鮮な血液が溢れ出る。痣ひとつないまま粉々に折れていた手首と足首、切り取られた舌、焼け爛れて真っ黒になった肺、傷だらけの臓器、そして胃の中からは毒草と布切れが現れ、皮膚の裏には怪しげな紋様まで…。ジェーン・ドウは哀れな被害者か狂人かそれとも別の何かなのか。恐ろしい結末であることに間違いないのに知りたくなってしまってスクリーンから目を離せませんでした。怪奇現象に見舞われながらも様々な臓器や残留物から女の正体を導き出すシーンは鳥肌もの。これは面白い。

久し振りに怖いホラーを観た気がします。解剖のシーンの画面的な怖さだけでなく、ちゃんとホラーしてるのが良かった。ラジオが混線して女の子の歌声が流れるとか、コッテコテなのにめっちゃ怖い!「アーーーー絶対怖い展開がくる!ホラきた!こわい!!!こえーーーーよ!!!」って思うこの感覚!ホラーの醍醐味!最高!!肝心のものがなかなか映らないとか、何かがいるのに分からないとか、そういう「見せない」怖さのバランスが素晴らしい。一方で解剖シーンの作り込みがすごかったです。皮膚を剥ぐところと肋骨をバキバキ持ち上げるところがイタタタタってなりました。死んでるけど。

舞台となるのは地下一階のワンフロアのみ、主な登場人物は検視官の親子二人と死体がひとつというコンパクトさなのにとんでもなく怖くてとんでもなく面白い。86分という短めの作品ですが、ものすごい濃度でした。思い返してみるとベタなシーンが多かったんですが(閉じ込められたりエレベーターが動かなかったり、間違えて彼女ちゃんを殺してしまったり…)、これまで何度も描かれてきたシーンが踏襲されているのに何故だかまるで新しいもののように楽しめました。なんでだろう。

そして何より、ジェーン・ドウの死体の美しいこと!真っ白な肌と溢れる鮮血の赤のコントラストが恐ろしいはずなのに美しい。ラストのラスト、爪先がちょこんと動くのが何故だかキュートで魅力を感じてしまった。

「松竹エクストリームセレクション」、第二弾の「アイムノットシリアルキラー」もすごく面白そうだったので期待大です。シネマカリテでは本作と連動した半券キャンペーンもやっている模様。これは行くしか!