sasame-goto.

映画や本やおいしいものについて

ダイ・ビューティフル@シネマカリテ


「ダイ・ビューティフル」予告編

 

■あらすじ
トランスジェンダーのミスコン女王・トリシャが、ミスコン優勝の夜に突然の死を迎える。長年の友人のバーブスは、トリシャの生前からの願いである「葬儀の7日間は毎晩さまざまなセレブのメイクをして欲しい」という願いを叶えようと奔走し、トリシャに完璧なメイクと衣装を施す。美しく飾り立てられたトリシャの美しさはやがて話題となり…。

 
※ネタバレ含みます。

物語冒頭でこの世を去ってしまった主人公・トリシャの人生を様々な角度から振り返るお話。過去の物語は時系列でなく断片的に紹介されていくのですが、トリシャの人となりを垣間見ながらトリシャという一人の人間の生き様を知ることができる素晴らしき作品でした。すごく良かったです。

バーブスちゃん良い子だなぁ…。トリシャとバーブスの二人がとても良いコンビで大好きでした。ものまねメイクをしながら「これなーんだ?」「レゴでしょ」「レゴじゃねえわ!」みたいなやりとりにめっちゃ笑った。そんな微笑ましいやり取りもありつつ、真剣に語らうふたり。「死んだら綺麗に着飾ってほしい」トリシャと「生まれた時の男の姿で神様のところに戻りたい」というバーブスはまるで真逆の考えなのだけど、お互いそれを決して否定せずに尊重し合っていたのがとてもよい。だからこそバーブスはトリシャの願いを叶えたし、トリシャの髪を切ってしまった家族を責めていたし、ほんとうにトリシャの一番の理解者だったんだろうなぁ。そんなバーブスの作り上げたトリシャの美しさと言ったら!万華鏡のように次々姿を変えるトリシャの虜になってしまう。物語が進んでトリシャの内面を知るにつれ、さらに美しく見えていきました。ほんとうにほんとうに綺麗だった…。

そしてこの作品、好きなシーンが盛り沢山で困っちゃいます。トリシャにウェディングドレスを着せるシーンで、デザイナーが「ハサミを」と言ったシーンに痺れました。本物のプロによる美の追求、そしてそれを決心させたトリシャの美しさ…。美しいウェディングドレスがトリシャのために切り裂かれていく様は溜息ものです。すごいシーンだ…。

あと、トリシャが家を出る時に「私はトリシャ!トリシャ・エチェバリア!」と声高に自分に名付けた新しい名前を宣言するシーンも格好良かった。そして一番好きなのは、前述のバーブスちゃんと自分の葬儀について話すシーン。「神様からもらった身体をこんなに美しくしたのよって見せてあげたい」と自信たっぷりに微笑むトリシャの美しさったら…。あの時の表情、本当に綺麗だったなぁ。

葬儀にお父さんが乱入してくるかとドキドキしたけど来なくて良かったです。物語的にはそこで一波乱起こってしまうのかと思ったのだけど、何も起こらないようめちゃめちゃ祈ってしまった。「最強の二人」の時もこんな気持ちだったなぁ。物語の流れ的に必要かもしれないけど絶対何も起こってほしくない!って心から願ってしまうこの感じ。

あーほんとうにトリシャ綺麗だった…。棺の中でセレブを模した姿も、ミスコンでの姿も、部屋着のゆるい姿もどれも綺麗だったのだけど、トリシャの晴れやかな笑顔あってこそだなぁと思いました。トリシャだからこその、トリシャだけの美しさでした。すてきな映画を観たなぁ…。