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ジャッキー ファーストレディ 最後の使命@早稲田松竹

 

 


『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』予告編

 

■あらすじ
テキサス州ダラスでパレードをしていたジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される。群衆とファーストレディである妻のジャクリーンの目の前で怒った事件に世間は震撼する中、夫が過去となり業績を忘れられていくことに憤りを覚えたジャクリーンは葬儀の手配や墓地の選定を自身で取り仕切ることを決意する。

 
※ネタバレ含みます

観たいなぁ…と思いつつズルズルと見逃していた本作、早稲田松竹にてようやく鑑賞。なぜだか評価が低いようですが(鑑賞日の時点で2.9)、わたしはすごく面白かったのでやっぱり評価はアテにしてはいけないと思いました。大好きな映画である「セブン・サイコパス」も評価2点台だったので数字なんて何も信じないぞ!笑

ナタリー・ポートマン演じるジャクリーンの聡明でしたたかで美しいことよ!銃撃直後、病院へ向かう救急車の中で医療スタッフに任期中に亡くなった大統領の名を尋ね、彼らはとうに忘れ去られていたことを改めて思い知り、リンカーンのような荘厳な葬儀を行う決意をするのですが、この状況でそんな考えに至るのが本当に凄い。ファーストレディとしての矜持や覚悟がひしひしと伝わりました。

暗殺から葬儀までのたった4日間の間に、ジャクリーンを取り巻く環境は次々に変わって行きます。というか、大統領を失った以上、何もかもを変えざるを得ないのだけども。まだ夫の血の付いたスーツを着たジャクリーンの目の前で副大統領の大統領就任式が行われる中、気丈に振る舞う様は胸に痛いほど。でも、ファーストレディとしてあの場に立ち続けたんだろうなぁ。

そして葬儀が執り行われることになったものの、暗殺事件直後かつ容疑者まで殺害されたとあって、周囲の人々は徒歩での移動に反対します。そりゃまぁ、そうなりますわな…。そんな中で、「不安だというなら戦車でも装甲車でもお好きな乗り物でいらしてください。数千万人の視聴者の前でね」…うろ覚えなんですが、こんな風に啖呵を切る姿が印象的。たった一人の女性がここまで強く立ち回れるものなのか。もちろん、時に取り乱したり不安定であったりはするのだけど、ここまで立ち振る舞ったのは本当に凄い。

作中で流れるキャメロット」のシーンが素晴らしかったです。大音量で流れるオペラの中、美しい服やアクセサリーを身に纏って部屋中を闊歩するジャクリーンがなんともせつない。かつて在った隆盛を誇った都市と、凶弾に斃れた大統領の暮らした豪奢な生活空間に、諸行無常を感じてしまう。

ラストのこれまでの煌びやかな日々を振り返るシーンは、この後に起こる出来事を知っている身としては辛すぎた。義弟は暗殺され、可愛らしいあの息子も三十数年後に命を落とすのだと思うとなんとも複雑な気持ちになります。陰謀論云々というつもりはないけれど、あまりにも周辺に不幸が多すぎる…。

暗殺というケネディ大統領政権終焉のインパクトはもちろん強いのだけど、短い任期の間にあげた功績や撒いた種のことも忘れてはならないなぁと思ったり。2017年の今になってそんなことを思うのも、遺されたジャクリーンの采配があってこそ。夫をアメリカ国民のみならず世界中の人々の中で永遠の存在にした手腕はお見事としか言い様がない。

 

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命 DVD

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