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映画や本やおいしいものについて

ELLE エル@渋谷シネパレス

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■あらすじ
ゲーム会社のCEOを務めるミシェルは、ある日、自宅に侵入してきた男に暴行を受ける。しかしミシェルは通報せず、何事もなかったかのように日常を送り始める。エスカレートし接触を図ってくる犯人を前にしても警察に決して届け出ないミシェル。それには、ミシェルが過去に体験したある事件に起因していた。

 

※ネタバレ含みます

 

暗転した真っ暗な画面で男女の悲鳴と呻き声だけが聞こえるレイプシーンから開始。10秒近く続いたそのシーンのインパクトは絶大でした。犯人が逃げて一人取り残されたミシェルは、淡々と部屋を片付けて風呂に入り、寿司を注文します。ハマチも追加します。涙一つ流さないミシェルは一般的に描かれる「レイプされた女性像(という表現は我ながらクソだけど)」とはかけ離れていて、一体彼女に何が…?と思わずにはいられない。さらには後日カフェで食事をしていたら見知らぬ女性に突然トレイの残飯をぶっかけられる始末。それでも全く動揺しないミシェル。

 

そんな風に「なんで?」「どういうこと?」「何があった?」が積み重なっていくのですが、過去の事件が明らかになり納得。ミシェルの父親が三十年以上前に大量殺人を行い、今もなお収監されていて、当時のニュースで画像が出回ってしまったミシェルはフランス中で顔が知られてしまっている…という非常にしんどい状態であることが明らかに。

 

やがて、レイプ犯が隣人のパトリックであることが明らかに。しかし、ミシェルはパトリックの行為を受け入れ始め、さらには親友であり共同経営者でもあるアンナの夫とまで関係を結びます。性に奔放というレベルではなくて、もしやこれは父の犯した罪の贖罪のつもりなのか…?とも思ったのですが、どうも違う。復讐劇というほど能動的でもなく、淡々と精算していくような印象でした。

 

シリアスモードで鑑賞していたのですが、フフッと笑えるシーンがちらほらと。ミシェルが防犯グッズ(コショウスプレーはわかるとして、手斧って!)を犯人に使ってボッコボコに伸す様を想像してほくそ笑むシーンとか、ミシェルの息子・ヴァンサンの妻が出産したら両親に似ても似つかない肌の黒い子供が生まれて、ポカンとするミシェルと元旦那の前で諸手を上げて喜ぶ息子、そして何故だか満面の笑顔を浮かべている友人の黒人男子だとか。地獄!

 

女性は男性は云々と分けて考えるのはあまり好きではないのですが、この映画の終盤の女性の強さが印象深い。「夫の相手をしてくれてありがとう」と言って去ったパトリックの妻、夫と別れてミシェルと並んで歩き始めるアンナ、そしてアンナと共に笑って歩き始めるミシェル。最後に笑っていたのは女性だけだった気がします。

 

すごく気になることがあるんですが、猫どこに行った…?いつの間にかいなくなってしまって気になって仕方がなかったです。チラッと映ったりしてたのかなぁ。