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ブリグズビー・ベア@ヒューマントラストシネマ渋谷


ニセ教育番組を25年見続けた青年が主人公!映画『ブリグズビー・ベア』本予告編

 

■あらすじ
世間から隔絶されたシェルターで両親とともに暮らす25歳のジェームス。子供の頃から毎週届けられてきた教育番組『ブリグズビー・ベア』のテープだけが世界のすべてだった。新作を楽しみにしながら何度も繰り返し再生し、自分のサイトで考察を重ねていたある日、大勢の警察が現れて両親が連行されてしまう。両親だと思っていた二人は、生まれたばかりのジェームスを誘拐した犯人で、『ブリグズリー・ベア』はジェームスのためだけに作られた物語だった。生まれて初めての外の世界で初対面の本当の家族と暮らしはじめることになるが…。

 

※ネタバレ含みます

 

久し振りの更新になってしまった…。「シェイプ・オブ・ウォーター」を観て以来、何かそこまで雄弁にベラベラ語る気分じゃなくなっていたんですが、ブリグズリー・ベアがあまりにも最高すぎて感想をしたためにきました。オタクはすぐ饒舌になる生き物なのだ…。

 

予告を観た時点で名作の予感だったのだけど、本当に最高だった…。まず設定からしてグイグイ来てるし、「実は誘拐犯だったのだ」だけで一本の作品が作れるレベル…。しかしそこまではほんの15分ほどでさらりと描かれます。あらすじだけ聞くと、監禁されていた親子が救出されてから元の暮らしに戻るまでを描いた映画「ルーム」を思い出すんですが、本作の物語は別の展開へ。ブリグズリー・ベアの大ファンであるジェームスは、自ら続編を作ることを決意するのだ!

 

誘拐犯の作った作品を模倣することはジェームスに悪い影響を与えるのではないかと危惧する両親やカウンセラー。しかしジェームスは止まらない。だってブリグズリー・ベアが大好きなのだ。見知らぬ世界に放り出されたはずなのに、その気持ちだけを推進力にぐいぐいと進むジェームスに序盤こそハラハラするものの、あまりにも楽しそうな姿にワクワクに変わってしまいます。やがてその気持ちは周囲の人々に伝播し、家族や友人や刑事さえ巻き込みながら(超演技派の刑事さんがソーキュート!)、作品作りに邁進していく様がなんとも胸を打ちます。

 

くるくる変わるジェームスの表情が素直でとても良かったなぁ。初めて映画に出会った瞬間とか、ブリグズリー・ベアを他者から初めて褒められた感無量の表情とか!妹の友人の映画オタクくんに「これめっちゃ面白いな!」と言われ、うるうるきらきらしながら「You are my friend...!」というシーンは胸に迫るものがありました。ジェームスの世界のすべてはブリグズリー・ベアだったのだから、それが認められたらそりゃあうれしくなっちゃうよな…。

 

誘拐犯は悪。ではその悪の作った作品は?それを信じて愛してきたたった一人のファンは?とあれこれと考えてしまう。そんなことを考えながら観ていたのですが、最後の最後のアフレコのシーンが胸熱すぎた。罪は罪だし、悪は悪だけど、それでもあの作品はジェームスにとっての宝物であることに変わりはないんだよなぁ…。

 

「好きなら好きでいいんだよ」と背中を押してくれるような作品で、とても良かったです。誘拐されて監禁されていた青年が犯人の作り上げたキャラクターを愛してもいいし、中年男性が魔法少女に憧れたっていいし、90代のおばあちゃんがメタルを愛したっていいんだよなぁ…。好きって気持ちは最高さーーーーー!!!!!