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ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦

 

ペンギン・ハイウェイ 角川文庫

ペンギン・ハイウェイ 角川文庫

 

 ■あらすじ
郊外の新興住宅地に住む「ぼく」は、えらい人になるための努力を欠かさない。勉強もするし、たくさん本を読むし、歯科医院にだってちゃ んと通う。そんなある日、「ぼく」の住む街に大量のペンギンの群れが現れた。大騒ぎする大人たちを前に、ペンギンがどこからやってきたのか調べる研究をし ようと決意する。「ペンギン・ハイウェイ」と名付けた研究を進めるうちに、初恋相手である歯科医院のお姉さんが不思議な能力を持っている事に気付いてしま う。

kindleにて

読み始めた頃は主人公(アオヤマくんと言います)はかわいくないお子様だなーと言う印象だったのに、読み終える頃にはなんてよい子なのだろう…!!!と百八十度反転する結果に。一生懸命考えてとてもよくがんばったで賞…!


アオヤマくんによる一人称の地の文言い回しもとてもかわいい!「たいへん○○なのだ」という言い回しがソーキュート。この作者さんのお話は京都を舞台にした小難しい言い回しのお話を書く人、というイメージがあったのですが、まったくの新境地だった。でもすごく面白かったよう~。こういう感じもすてきまた違った魅力。

 

あと、子供の頃新しいノートを手に入れるとすごくワクワクしたんですが、その時のことを思い出したなぁ。アオヤマくんのお父さんが外国製のノートを買って 来てくれて、アオヤマくんがここにたくさんの研究成果を書きとめようと決意するあたりが懐かしいワクワク感を思い出した。そしてこのお父さんをはじめとし た周りの大人たちが子供たちの『研究』を大事に扱ってくれるのもとてもよかった。すてきな大人たちのお陰で少し安心して読めたような気がします。


冒険と初恋が同時に進行していく物語の中で、アオヤマくんがずっと思考してはノートに書き留めてすこしでも何かを得ようとするの がほんとうにかわいくて、そこからのラストシーンがまたせつなくて、最後の数行でこの本が「不思議でかわいい本」から「すごくいい本」になった気がする。 あの余韻はすばらしい。