sasame-goto.

映画や本やおいしいものについて

不連続の世界/恩田陸

 

不連続の世界

不連続の世界

 

 

■あらすじ
音楽プロデューサーの塚崎多聞を主役に据えた短編を五本収録。

【1】木守り男
散歩コースで出会う放送作家・田代といつも通り言葉を交わしていたある日、田代が不意に「コモリオトコ」という言葉を発する。一体何かと尋ねるが、田代はそんなことは言っていないと否定する。妙な気分で帰りの途につくと、木にしがみつく不気味な老人を目にしてしまう。

【2】悪魔を憐れむ歌
「聞くと死にたくなる」と噂される謎の歌手・セイレン。ある日、その曲を聞いたことがあるというDJがいると聞かされた多聞は、興味本位でDJに連絡を取る。地元の老人から送り付けられたと聞かされ、テープの出所を探ることになる。

【3】幻影キネマ
担当しているバンドのメジャーデビューが決まり、PV撮影のためバンドメンバーの故郷を訪れた多聞。映画の撮影にも使われる素晴らしい環境の中で撮影が進むが、メンバーの一人が浮かない顔をしている。なんでも、彼が映画の撮影現場に遭遇するたびに人が死んでいくらしい。

【4】砂丘ピクニック
翻訳中の作品に「砂丘が消えた」と記されていたのを疑問に思った翻訳家の巴と共に砂丘を訪れた多聞。実際に訪れてみても真相は不明のまま、美術館へと足を運ぶ。館内のミニシアターから男が姿を消してしまうという椿事に遭遇する。

【5】夜明けのガスパール
妻のジャンヌがフランスに里帰りしてしまった多聞だったが、友人に誘われて夜行列車で四国へ旅に出ることに。深夜、怪談話を行うが、多聞の語った話にはある重要な問題が隠されていた。

 ちょっと不思議でゾッとする話なのかなと読み進めると、最後の最後で洒落にならない怖い話に変貌するお話が多かったです。

後半3作品は岡山の尾道鳥取砂丘サンライズ出雲の車内…と、中国地方の登場が多かったなぁ。三県とも行ったことがあったので、訪れた町の情景を思い起こしつつ楽しめました。サンライズ出雲は乗ったことないのでいつか乗ってみたいなぁ。

「木守り男」は恩田陸らしく何だかすっきりしないけど、そのすっきりしなさが味になっているような作品。個人的に一番好きなのは「幻影キネマ」でした。ミュージシャンの青年の記憶の正体にゾッとした…!

「砂丘ピクニック」は結局消えた男の目的が何だったのかはっきりしなくて、こちらは前者とは異なっていやいやそこは説明してくれよというのが素直な感想…。ぼやかして味が出ることもあれば逆に作用することもあるのだなぁ…。人によって何が気になるかは異なるだろうけれど、美術館のあの男は何がしたかったんだろう…メインの謎ではないものの、すごく気になる。悶々。

「夜明けのガスパール」は絶対だと思っていた語り手そのものが揺らぐような話でとても面白かった!また多聞視点のこういう短編を読んでみたいなぁ。