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キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇

 

 

■あらすじ
池袋のトラブルシューター・マコトと池袋を仕切るGボーイズのキング・タカシが高校生だった頃の物語。都内やその近郊でのカラーギャング抗争が激化する中、タカシの兄・タケルは周囲からボスと慕われながら池袋の街を治めていた。しかしそんなある日、タケルの身に危険が迫る。


※ネタバレ含みます

IWGP第一作の二年前という設定の本作。マコトもタカシも高校2年生で、まだ池袋にGボーイズが誕生する前の話であり、タカシが氷の王様になるまでの話でもあります。本編での設定や時代背景と少し整合性が取れないところ(Gボーイズの先代キングは存命であるかのように話されていたような…とか、マコトが高校生だった頃に「オレオレ詐欺」も「キラキラネーム」も名称として存在していないよなぁ…とか)がちらほら出てくるのだけど、IWGPサザエさん方式なのだと思えば解決するのでそう思うことにしました。

高校時代のマコトも昼間から街をぶらついて日本を憂いていて、自分の知ってる今のマコトと同じで和んだ。一方、タカシは少しシャイで神経質なイメージ。これまでタカシの素性はほとんど描かれていなかったので、家族構成やどうやってあんなに強くなったのかまで描かれていて驚いた。タカシはいいとこのボンボンっぽいイメージがあったので、意外な出自だったなぁ。

マコトもタカシも高校生らしく時にやんちゃで無茶もしていて、こっそり卒業アルバムを見てしまったような気持ちで微笑ましく見ていたのだけど、二人が直面したことは高校生にはあまりにも重すぎる。タカシがフッとスイッチが入ったように「キング」になる瞬間は少し悲しかったなぁ。誰よりも近い距離でそれを見て、最後まで見届ける覚悟であろうマコトという二人の関係への理解がますます深まった気がします。本編の方の新刊はまたすこし違う気持ちで読めそう。

そしてやっぱり、マコトの母ちゃんは良いキャラだなー。できたての夜ごはんは絶対にマコトから食べさせるっていうのになんだかホロリときてしまった。はらぺこの子を放っておけないおかあちゃんって良いな。ドラマの森下愛子のイメージが強くて、小説でも森下愛子で脳内再生されるんですが、強く優しいかあちゃんの存在のお陰でつらいシーンも乗り切れた気がします。

やっぱりIWGPは良いなぁ。文庫派なので手に取るのが年単位で遅れてしまっているけど、新作も楽しみです。