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映画や本やおいしいものについて

イン・ザ・プール/奥田 英朗

book

 

■あらすじ
伊良部総合病院の地下にある神経科を訪れる5人の患者たちを描いた短編集。

【1】イン・ザ・プール
体調不良が気にかかりクリニック通いを続ける内、神経科を受信した大森。運動するよう伊良部にアドバイスされプール通いを始めるが、今度は泳がずにはいられないプール依存症になってしまう。

【2】勃ちっ放し
別れた妻との淫夢を見て勃起したのをきっかけにそのまま鎮まらなくなってしまった田口。泌尿器科で陰茎強直症と診断されるが治療法が見出せず神経科へ回される。

【3】コンパニオン
女優を目指す安川は、ある日誰かに尾行をされていることに気付く。やがて街行く人々全員が自分のストーカーになっているような気がし始めて、伊良部の元へ相談に訪れる。

【4】フレンズ
高校2年の津田は、どんな時も携帯を手放さない。一日に200通以上メールを送信し、携帯を手放すと手が震えるようになってしまう。親に勧められ伊良部の元を訪れる。

【5】いてもたっても
ルポライターの岩村は、煙草の火の消し忘れが気になって出かける前に何時間もかけて確認しないと気が済まなくなってしまう。自ら資料を当たった結果、強迫神経症であろうと推測し、神経科の受診を決意する。

ずっと気になりながらもなんとなく後回しになっていたのですが、ようやく読めました。いたって平凡な総合病院の地下にある怪しげな精神科のお話。勃ちっぱなしは別として、「趣味にハマりすぎる」「誰かがついてきているような気がする」「マメに携帯メールをチェック」「戸締りや火の元の確認」なんていうのはどんな人も経験することですが、本作の患者たちは至って深刻。日常生活に支障をきたすほど追いつめられているのだけれど、それに対する伊良部のゆるさと言ったら。

まるで頼りにならなそうに見える伊良部がなんだかんだで患者たちが治るきっかけを与えているのが面白いような、和むような、でも伊良部に会いたいかと言われるとできたら会いたくはない…という複雑な感想を抱いてしまう…。登場人物たちも伊良部に負けず劣らず一筋縄ではいかないキャラクターばかり。どこか滑稽なのだけど、現代社会の犠牲者のようで応援したくなってしまう。

 

 神経症や依存症など、心療内科絡みの物語を取り上げているとは思えないほど軽くさくさく読めてしまいます。軽い気持ちで読めてオチもすっきりしているお話が多いので、旅行の時なんかに続きを読むのもいいかもなー。これは続きも読みたい…!