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ヒメアノ~ル@ヒューマントラストシネマ渋谷


ヒメアノ~ル Himeanole (2016) 実写映画予告編

■あらすじ
フリーターの岡田は、パッとしない生活に焦燥感を抱きながらも、流されるままビル清掃のアルバイトをして日々を過ごしていた。ある日、カフェの店員に一目ぼれしたというバイト先の先輩・岡田に橋渡しを頼み込まれてカフェを訪れると、高校時代の同級生・森田に遭遇する。先輩の恋の相手である店員・ユカは森田にストーカーされていると打ち明ける。安藤と岡田でユカを守ると約束するが、森田の行動は徐々に常軌を逸していき…。

連休の初日、しかも朝の9時半から観る映画としてはどうなのかという気もするんですが、劇場は8割以上埋まっていました。もう公開して大分経つのにすごいなぁ。かくいう私もあまりにも評判がいいので足を運んだクチなのですけども。

そしてこの作品、面白かった。ものすごく面白かった。これはすごい。緩急の付け方が素晴らしく、序盤~中盤のコメディタッチな恋愛物の雰囲気が森田の登場でガラリと切り替わる瞬間の落差にゾッとしました。これまで作り上げられた和やかな世界にどんどん浸食してくる森田の闇が最高に怖い。そこでようやく現れるタイトルロゴも格好良かったな。

森田の登場後は数々の暴力がスクリーンを支配します。殴り方とか出血の様子とか失禁とか、なんだかすごくリアルだった。そんな描写の中、淡々と暴力を振るう森田の様子がめちゃくちゃに怖い。目の前の凄惨な状況に対して森田の目は常にぼんやりとしていて、ごく自然に犯罪を犯していく異常性が際立っていた。

 

森田の目つきがまさに「深淵」という感じでとても恐ろしかった。何も考えていないような、でもその「何も考えていない」の定義さえ普通と逸脱しているというか、なんというか、全てにおけるスタートラインが普通の人と違っているんだなぁという感じ。同じ空間で生きてるんだけど、ルールが違う人というか…。同じ場所にいながらも、森田の世界だけはトレーシングペーパーを一枚重ねた別のレイヤーであって、時折それが交錯して森田の世界に取りこまれるともう戻れない、というか…。

 

そしてこれはきっと誰もが感じるところであろうと思うのですが、最後の台詞のインパクトたるや。もうめちゃくちゃになって、最後の最後にあのシーンからのあの台詞。ザックリ刺さりました。すげえ…すげえよこの映画…。

原作は未読なのですが、原作とは森田の設定が全く異なるそうです。原作だと森田は完全なるサイコパスで、サイコパスゆえ孤独を感じているという設定なのだとか。映画ではなんであの子に固執したのかが良く分からなかったのだけど、原作設定ならば「普通になりたかったから」なのかなぁ。だって、「カフェの店員さんに恋して毎日通う」ってすごくベタでしょう?普通になれない人からしたら、映画や漫画でテンプレ的によく描かれているこの設定ってすごーく「普通」だと思うのです。形から入ってみたけど、結局「本当に普通」のやつに取られちゃう…あー殺そう、って流れなのだろうか。

最近邦画から足が遠のいてしまっていた上に、たまに邦画を観るぞと意気込んで観てみてもなかなか好きになれる作品に巡り合えずに悶々としていたんだけど、本作で邦画もまだまだいける!と思えました。凄く良かったぞ~!!!!

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ここらへんの記事が面白かったので貼っておきます。ジャニーズはwebでの顔出しNGなのだけど、そろそろ解禁してもいい気がする…。せっかくの主演映画のハレの場なのに勿体ない…!